英国宝石学協会の宝石学会が10月26日、27日ロンドンのヒルトンホテル(ケンジントン)で開催されました。今年は英国宝石学会設立100周年ということで、学会も二日間にわたり、13名のスピーカによるレクチャーがありました。
一日目は「宝石学の基盤」というテーマで、宝石学の歴史、インクルージョンの発見に関する歴史、ジュエリーの歴史などを科学的根拠だけではなく、その時代の人々に支持されていた考え方、当時の流行などを交えながら話が進みました。
中でも、宝石学の生みの親と呼ばれ、インクルージョンの世界を広めたスイス、ギュベリン宝石ラボラトリー(GGL)の(故)Mr. E.J.Gubelinと共に「Photoatlas」を出版されたGIAカリフォルニアのMr.J.I.Koivulaの話は大変興味深かったです。彼は46年間に渡りインクルージョンの写真を撮り続け、800を超える記事を発表されており、今回はその研究の一部でも話が直接伺えたのは、とても良い刺激になりました。鑑別にインクルージョンが大変重要であるということは承知していますが、やはり数を多く見て、自分の目を確かなものにしていかなければならないと思いました。
またあらためて、宝石の中に広がる潜在的な世界は美しいと思いました。
17世紀のスウェーデン王室のジュエリーの話は大変華やかな世界であり、当時の王室の権威と宝石が王室にとってどれほど重要なものであったかを伺い知ることができます。
18世紀以降は宝石の産出量が増えたことで、世界のジュエリーの概念が変わってきます。ジュエリーが大量に作られ、王室だけではなく一般の人(と言っても上層階級を中心とした)も宝石を身につける機会が増えました。
アメリカの宝石として、ティファニー社のクンツ博士(Dr.G.F.Kunz)の人生や宝石学に対する姿勢について、またティファニー社が如何に市場を開拓してヨーロッパとは違ったアメリカならではのスタイリッシュなジュエリーを生み出したかといった話も興味深かったです。
二日目は「現在の宝石学」というテーマで、鑑別を如何に確かでスムーズに行うかといった技術的な話がされました。「磨いて輝くのは宝石だけではなく、自分の鑑別技術も」といった話から始まり、既存の屈折計を如何に活用していくか、ポータブルな鑑別器具を如何に使いこなして行くか(モバイル化していく近未来の話も含め)と興味はつきません。
また最近市場に増えてきた緑、黄緑、紫がかった青のクオーツについての最新報告も行われました。
英国宝石学会は毎年10月下旬にロンドンで開かれます。英語ということで、私も全てを把握するのは正直申して・・・大変です。しかし、同じく宝石学を学んだ世界各地の仲間に会える機会であり、先輩方の話を伺うことができる点は大変勉強になりました。
写真上:学会の会場。
写真下:スゥエーデン王室ジュエリーの話をされたMs.Sandra M.Brauns (Bukowski Auction House, Stockholm)と一緒に。
片山新子(かたやま しんこ) FGA
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(↑英国宝石学協会・学会に参加した個人的な出来事をブログに書いています。)
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今年は、英国宝石学協会が設立されて100周年という特別な年にあたります。
世界の中で最も歴史ある「宝石学協会」ですが、太古の時代から採掘されてきた宝石の歴史から見ると、「宝石学の歴史ってそんなに浅いものだったの?」と感じてしまいます。
化学組成や内包物から化学的に宝石を分別していく手法が確立されたことで、同じ色をした「ルビーとスピネル」、「ガーネットとピンクトルマリン」などが区別できるようになりました。今日では多くの宝石が合成され、オイルや加熱、照射といった処理が施されています、「宝石学」は天然とニセモノの区別だけでなく、その天然の宝石が「どのような処理がされているのか」といったことを鑑別する上でも欠かせないものです。処理する側としても宝石の性質を理解して、無理のない恒久的な処理を行う上でも宝石学的な知識は必要でしょう。高級な宝石を持つのですから、情報がしっかり開示され納得のいく買い物ができるようになればと願います。
私が「宝石学」を学ぶきっかけとなったのは、宝石の内部に広がる内包物の美しさに魅かれたからです。ちょうど主人がスリランカに赴任していたということもあり、コロンボで英国宝石学協会の鑑別資格であるFGA(Fellow of Gemmology Association)の勉強をしました。この資格は日本やカナダ、オーストラリアを始め22カ国の提携センターで取得することができます。スリランカの場合、コロンボとキャンディのブリティシュ・カウンシルで年2回(1月と6月)に試験を受けることができます。もちろん英語のみですが・・・。
1.ファンデーション・コース(半年)
それに合格した後、
2.ディプロマ・コース(半年)
全部で1年のコースです。授業は週1回から2回、少人数です。私の時には、ファンデーションは私のみで、ディプロマは二人でした。お陰で、私のペースで質問することができました。(←だから合格できたのでしょう)ディプロマを取得すると「FGA」というタイトルを使うことが許されます。スリランカの場合、このタイトルがあれば鑑別書を発行することができます。(お店で出されるのは、ジュエリーの保証書であり鑑別書とは違います。)スリランカでは宝石学を大学で学ぶ人は多いのですが、FGAの資格取得には費用がかかりすぎる(教材、試験代がこちらの物価から考えると非常に高い)ので、躊躇される方が多いです。(大学で学んだ場合はファンデーションコースが免除されるが、ディプロマはコースと試験を取らなければならない)
日本では宝石学の資格と言えば、GIA(米国)のGGを取得される方が多いと思います。
GIAの詳しいことはわかりませんが、FGAはビジネスとして宝石を扱うことより学問としての宝石といった色合いが強く、試験の内容も記述式です。勉強していて、途中何度も、「どうして、こんなに掘り下げた質問、癖のある質問が多いのか?」と腹ただしく思ったこともあります。会員のメーリングリストも鉱物的な質問や議論が多いように見受けられます。
さて、英国宝石学協会の宝石学会が10月26日、27日ロンドンのヒルトンホテル(ケンジントン)で開催されます。100周年に伴い、例年にないスピーカーの多さで、充実したものになるでしょう。次回はその会場の様子などをお伝えします。
片山新子(かたやま しんこ)、FGA
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9月6日から9日までスリランカ、コロンボで「第18回スリランカ国際、宝石・宝飾展覧会」(Facets Sri Lanka 2008)が開催されました(写真右がオープニングセレモニーの様子)。スリランカの宝石業界最大の展示会であるこのショーは毎年9月上旬に開催されます。「インターナショナル」とされていますが、治安の悪化で、海外から出席される宝石関係の方々が少なく残念です。それでも今年は中国から10名ほどの視察団が訪れ、またミャンマーからも7業者がミャンマー産の美しい宝石や宝飾品を販売しておりました。中国は中産階級人口の増加で、宝石ニーズも高い国です。スリランカとしても中国へのビジネスの展開、また豊富な宝石が産出されるアフリカ、マダガスカルやタンザニアとの協力を視野に入れているようです。開会式で投資開発大臣(Minister of Enterprice Development&Investment Promotions)のスピーチでもその点を強調されており、「まずは自分たちが豊かになり、国全体が豊かになることで貧困層を撲滅させよう」とおっしゃっていました。あらためて、「あぁ、この国は発展途上国だったのだな〜」と感じました。こちらで生活していると、想像を超える金持ちや物乞いのいる状態をあたり前のように感じてしまいます。大臣のおっしゃる通り、この国から産出された宝石で、一部の人間だけでなく、富が全体に行渡る日(福祉の充実、雇用拡大、正当な賃金など)がくればいいと思いました。(←その前に今の物価の高騰を何とかしてほしいと一般市民は思っていると思いますが、ちょっと話が宝石からずれてしまいましたね。)
今年の「宝石展覧会」は111のブースが参加しています(写真左は会場内の様子。写真右下は出展業者)。コロンボ以外の地方の宝石業者の参加も多いため、見る側としてはいろいろなレベルの宝石や値段を一同に比べることが出来ます。また店ごとに特徴があり、10カラットを超えるサファイアやキャッツアイといった高級宝石を扱っている店や、クオーツやトパーズなど比較的値段が手頃な宝石、希少石を扱う店、ゴールドジュエリー、シルバージュエリーなど年々規模は大きくなっているようです。またこの期間中しか一般販売はしないとされている、ダイアモンドの販売もあります。
私が興味深かったところは、コランダム(おもにブルーサファイア)の加熱技術を説明しているブースです。加熱業者がその技術を説明する場所があるのは何ともスリランカらしいと思いました。
写真下から3番目:.主にルースの状態で販売されている様子。
写真下から2番目:ジュエリーを販売するコーナーの様子
写真一番下:加熱処理される前とされた後のサファイア
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前回はスリランカの宝石産地について書きましたが、主にサファイアなどが採掘されるのは漂砂鉱床です。長い年月にわたり風雨や洪水などにもまれた結果、サファイアの結晶は三方晶系の形を失い、まるで小石のような状態で発見されます。同じ場所で採掘されるスピネルの結晶も等軸晶系ではなく、つるっとした感じの丸みのある小石のような状態です。
市場に出回るサファイアの多くは、色を改善する為に「熱処理」が行われています。この処理についてはまた改めて書いていきたいと思いますが、研摩以外に人的な処理が何もされてないものは「非加熱サファイア」と呼ばれ、その希少性からも加熱されたものと比べ値段が高くなります。特にカラット(重さ、サイズ)の大きいものはさらに希少です。
私は原石で1〜3カラットほどのサファイアを買付け、それを研摩するのですが、もとの形が平べったい小石のような形の為、きちんとしたプロポーションのカットを望めば、研摩後は原石の35〜50パーセントになってしまいます。主な色は青、ピンク、黄色で、中には紫、パパラチアか?と思われるようなオレンジがかったピンク、無色のものもあります。原石のままでも美しいのですが、そのままではスリランカ国外持ち出しが禁止されています。形を変えず、磨いただけのものはジュエリーに加工したものであれば国外に出すことが可能です。何とか原石に近い形で、その魅力を伝えることができないか?そんなジュエリー政策も考えています。
◇ ご案内
- 現在、日本へ一時帰国(8月20日頃まで)しております。
スリランカの非加熱サファイアや半貴石のルースを取り揃えております。
興味ある方はメールを下さい。→ shinko@globalreach.co.jp
(宝石やスリランカの状況など、どうぞお気軽にお問い合わせください。)
また、スリランカの宝石について、宝石学的視点や宝石の産地の話を交え親しみやすくお話します。アートセラピストの彩香さんの(東京・神楽坂)イベントで、私が宝石の話しをさせて頂くことになりました。ぜひ、ご興味がありましたらご参加ください!!
- 7月26日・午後2時より5時まで
イベント詳細
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スリランカの宝石の歴史は、紀元前250年頃までさかのぼることができると云われています。その太古の時代から今日に至るまで、これまで紹介したような様々な宝石が産出されています。もういい加減、産出量も減っただろうと推測しても、現地の地質学者は、まだ宝石層のある地質の数パーセントしか採掘されていないと言います。この小さな島国にまだまだ可能性があるのか?と頼もしく思ったりもしますが・・・。
さて、スリランカの地質は北西地域以外、主にプレカンブリア時代の岩石で構成されています。その時代のスリランカは、アフリカのマダガスカルと陸でつながっていたと云われていて、現在産出される宝石の種類の類似性を考えても大変興味深く、まさに「宝石」がその歴史の「生き証人」になっています。
宝石が産出される主な地域は、島の中心から下のあたり(Highland Southwestern Complex)に集中しており、「宝石の街」という意味を持つ「ラトゥナプラ」がもっとも多くの種類を産出しています。この辺りは漂砂鉱床で、長い年月にわたり風雨や洪水などにもまれ、その結晶は形を失い、まるで小石のような状態です。それらが、川などに流され、また地中に埋もれ、比重が大きい為一箇所に集まって宝石鉱床となります。地中15メートルから30メートルくらいを井戸のように掘る(Pits)とその鉱床にたどり着きます。また川に流れ込んだ宝石は、川底をさらう感じで採掘します。
機械を導入して大規模な採掘を行う業者もいますが、昔ながらの方法(穴を掘っていき、水をくみ出す)を人力でしている場所も多いです。採掘現場は、穏やかな田園風景が広がり、大変のんびりとした感じが私は好きです。今は爆弾テロなどで、スリランカ全体の治安がよくないのですが、将来、平和になったらぜひスリランカの採掘現場をいらして下さい。
(写真・採掘されたサファイアは結晶の形はなくなり、小石のよう。色が美しい)
片山新子(かたやま しんこ) FGA
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クオーツの結晶の形は先端が尖がった感じの六角柱状になっています。化学組成は二酸化珪素。割れると貝殻状の断口をしています(まっすぐ割れない)。無色透明のものを「水晶(ロック・クリスタル)」と呼び、スリランカでは現地のシンハラ語で「Palingu」と呼び、仏教徒は記念碑などの上に置き、とても神聖に扱っています。
茶色や黒っぽい色の「スモーキー・クオーツ(ブラウン・クオーツ)」は地中で天然の放射能を浴びたと考えられています。無色の水晶に照射し色を茶色にする技術もあります。スリランカではスモーキー・クオーツは大きなものが産出されますが、あまり宝石レベルの美しいものは少ないのが残念です。
クオーツの中でも有名なアメジストは赤紫の美しいものから薄い紫のものがスリランカの広範囲な地域で産出されます。中には部分的に紫と黄色のシトリンが同じ石に現れるものもあり、「アメトリン」と呼ばれています。シトリンは黄色がかったクオーツを指しますが、残念ながらスリランカで宝石レベルのシトリンは産出されにくいです。コロンボの店頭に並ぶ多くのシトリンはアメジストを加熱してシトリンにしたものです。これらクオーツのトリートメント(処理)はスリランカでは一般的にされていません。おそらく多くのアメジストやシトリンは海外から輸入されたものでしょう。
ピンクのかわいらしい色あいの「ローズ・クオーツ」は世界的にも美しい結晶で見つかることは大変稀です。少しもやのかかったようなピンクで、これは、内包物の微細なデュモルチエ石結晶によるという説や微細なルチルによるものという説があります。このルチルが、正しく方向を持って並ぶと、石の上に3本の光の帯が現れます。このスター・ローズクオーツは、スターサファイアと違い、ライトを宝石の真上から当てるのではなく、宝石の後ろ(下)から光を通過させることでスターを見ることができます。また、一条の光の帯が見える「クオーツ・キャッツアイ」があります。この場合は光を上から当てて見ます。
私自身、クオーツを買う時に合成か天然か鑑別に悩む時があります。はっきりと内包物を確認できればいいのですが、クリアーなものの場合その判断は大変に難しいです。アメジストの特徴的な内包物として、虎縞模様のものや色むらがあります。ただ、天然ものも値段が安いので、かなり大きめのサイズを購入することができます。その大きさから大変インパクトのあるジュエリーとなるでしょう。
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宝石学的に言えば、ムーンストーンは長石(英語名Feldspar)に分類されます。長石の化学組成はカリウムとアルミニウム珪酸塩で地球上の造岩鉱物の中でも一般的です。この長石の中でもスリランカで豊富に産出されるのはムーンストーンです。特に青い光が表面に浮かぶシラーは、まるで、本当に月から来た宝石なのではないかと不思議に感じます。
この青いシラーは学術的にはアドゥラレセンス(Adularescence)と呼ばれ、その光の仕組みはレイリー散乱(空がどうして私たちには青く見えるのか?)と同じです。簡単に言えば、ムーンストーンはふたつのタイプの長石がサンドイッチのように互いに層をなしており、そこに入った光の干渉により青く見えまるのです。
http://plaza.rakuten.co.jp/gemgasuki/diary/200611230000/
(レイリー散乱とムーンストーンについて書いた個人ブログ)
ブルー・ムーンストーンは通常の乳白色のものと比べて値段がかなり高いです。スリランカでは産出量が減ってきていると言われています。乳白色のものの中にはキャッツアイのように白い光が目のように浮かぶものもありますがブルー・ムーンストーンに比べればかなり安いです。
残念ながら硬度が6と真珠と同じ低さですので、ジュエリーとしてはペンダントトップなどにするのが無難でしょう。普通はカボションにカットされますが、細長く大きさもあるカットが多いので、存在感のあるジュエリーになると思われます。
レインボー・ムーンストーンと呼ばれる赤や黄色、青などが浮かび上がるものがありますが、正式には透明のラブラドライトのことで、残念ながらスリランカでは産出されません。
片山新子(かたやま しんこ) FGA
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スリランカで産出されるトパーズの大半は無色です。稀に黄色や青、青みがかった緑が取れる場合があります。しかしその青は限りなく透明に近く、一般的に「ブルートパーズ」としてコロンボの店頭で売られているものは、無色のトパーズを照射し、更に加熱して青にしたものばかりで、おそらく海外から入ってきたものだと思います。自然界にこのような色は存在しないだろう?と思われるような青さのトパーズから、アクアマリンに似せて作ったのでは?と疑ってしまうような青まであり、値段もアクアマリンと比べて大変お手頃となっています。アクアマリンとトパーズを見分ける方法は、最初の段階ではチェルシー・カラー・フィルターを使い、色の反応(アクアマリンなら緑っぽく見え、トパーズは無色)を簡単に調べます。しかし中にはトパーズでも緑っぽく見えるものもあるので注意が必要です。また比重に関して言えば、アクアマリンは2.65から2.80、トパーズの場合は3.5から3.6とトパーズの方が重いのですが、これは多くの裸石を取り扱った経験がなければ、手で持っただけで判断するのはやはり難しいでしょう。ルーペなどで内包物を見ることも可能ですが、これも経験が必要です。
トパーズは宝石学では斜方晶系に属し、一方向に完璧な劈開(へきかい)があります。つまり衝撃が加わりヒビなどが入る場合は、真っ二つに割れることがあります。(通常のジュエリーとしての使用では問題ないと思います。) その点を理解した上であれば、トパーズは硬度が8と高く輝きもきれいなので、ジュエリーとしてペンダントトップにするなど、大きさを楽しめる宝石になると思います。
希少性が高いトパーズとして、ピンクやシャンペンカラーのインペリアル・トパーズが有名ですが、残念ながらスリランカでは産出されません。(これらは主にブラジルで産出されます。)
片山新子、FGA
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ジルコンという音の響きからダイアモンドのイミテーションにされることもあります。しかし、硬度が6.5から7.5とダイアモンドと比べて低い為、10倍レンズで覗くとファセットにキズなどがあり、簡単に見分けがつきます。スリランカのマータラで採掘される無色のジルコンは、「セイロンダイアモンド」と呼ばれています。しかし、こう言われても本物のダイアモンドだと思って買う人はいないでしょう。最近は無色のジルコンも発見されにくくなりました。
スリランカ産のジルコンは、成分に放射性のトリウムとウラニウムが入ることで、結晶格子が崩壊している「メタミクト(ロー・タイプ)」構造のものが多いです。その為、色も緑、茶色、赤味やオレンジがかった茶色のものが多く、それらを加熱処理すると、結晶格子が再生され、「ハイ・タイプ」になります(自然界にもハイ・タイプのものが存在します)。色は、青、オレンジ、無色などで、カンボジアなどでは茶色のジルコンを熱処理し、すばらしい青色に変化させています。この青色をさらに酸化状態で熱を加えると、輝かしい黄金色に変わります。ちなみにジルコンの語源はペルシャ語で「金色」です。
スリランカ産のジルコンは熱処理をしても鮮やかな青に変わるものはないと思われますが、黄色ぽい茶色のジルコンを加熱することで、キャッツアイのような一条の光(シャトヤンシー効果)を作りだすことができます。これは、「ジルコンキャッツアイ」と呼ばれていますが、あまり宝飾向きではないでしょう。
日本ではあまり人気のない宝石ですが、強い輝きと、硬度さえ理解しておけば、宝飾として充分魅力的だと思います。歴史的にも古い宝石なので、「ジルコンを身につけると、知恵、名誉、富をもたらす」と言われ、信じられていた時代もあったそうです。真意のほどは知りませんが、もう少し価値が見直されてもいいのでは?と私が勝手に思っている宝石です。
片山新子、FGA (英国宝石学協会、宝石鑑別資格)
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スリランカで産出されるトルマリンの色は、黄緑、深緑、蜂蜜のような茶色が多く、まれに青や明るい緑色も発見されますが、ルベライトと呼ばれる赤やピンク、バイカラーのウオーターメロンなど人気の高い色は産出されません。店頭でトルマリンは多様な色が販売されていますが、大半はアフリカや近隣諸国から輸入されたもので、値段も店によってかけ離れています。
スリランカ産出のトルマリンは、その見た目の色や多色性などでジルコン、コーネルピン、シンハライト、アンダリュサイトに間違えられる場合があります。紅茶の産地であるウバで産出されるトルマリンは「ウバイト・Uvite」と呼ばれています。希少性が高いものでは、キャッツアイのように一条の光(シャトヤンシー効果)がでるトルマリンも産出されます。
金褐色のものも産出され「ドラバイト・Dravite」と宝石学的に呼ばれますが、通常の宝石業者はルベライト以外はトルマリンとしか呼びません。
無色のトルマリン(カラーレス)は無色のスピネルと同じように大変希少性があります。
※写真はラトゥナプラーでのひとこま。のどかな田園風景の中、所々で宝石採掘用に穴(井戸のよう)があけられ、機械や人力で鉱夫が作業しています。
片山新子、FGA
最近、産地ラトゥナプラに行った経験も書き込んでいます。
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