スリランカ宝石便り〜その16〜英国宝石学協会100周年
今年は、英国宝石学協会が設立されて100周年という特別な年にあたります。
世界の中で最も歴史ある「宝石学協会」ですが、太古の時代から採掘されてきた宝石の歴史から見ると、「宝石学の歴史ってそんなに浅いものだったの?」と感じてしまいます。
化学組成や内包物から化学的に宝石を分別していく手法が確立されたことで、同じ色をした「ルビーとスピネル」、「ガーネットとピンクトルマリン」などが区別できるようになりました。今日では多くの宝石が合成され、オイルや加熱、照射といった処理が施されています、「宝石学」は天然とニセモノの区別だけでなく、その天然の宝石が「どのような処理がされているのか」といったことを鑑別する上でも欠かせないものです。処理する側としても宝石の性質を理解して、無理のない恒久的な処理を行う上でも宝石学的な知識は必要でしょう。高級な宝石を持つのですから、情報がしっかり開示され納得のいく買い物ができるようになればと願います。
私が「宝石学」を学ぶきっかけとなったのは、宝石の内部に広がる内包物の美しさに魅かれたからです。ちょうど主人がスリランカに赴任していたということもあり、コロンボで英国宝石学協会の鑑別資格であるFGA(Fellow of Gemmology Association)の勉強をしました。この資格は日本やカナダ、オーストラリアを始め22カ国の提携センターで取得することができます。スリランカの場合、コロンボとキャンディのブリティシュ・カウンシルで年2回(1月と6月)に試験を受けることができます。もちろん英語のみですが・・・。
1.ファンデーション・コース(半年)
それに合格した後、
2.ディプロマ・コース(半年)
全部で1年のコースです。授業は週1回から2回、少人数です。私の時には、ファンデーションは私のみで、ディプロマは二人でした。お陰で、私のペースで質問することができました。(←だから合格できたのでしょう)ディプロマを取得すると「FGA」というタイトルを使うことが許されます。スリランカの場合、このタイトルがあれば鑑別書を発行することができます。(お店で出されるのは、ジュエリーの保証書であり鑑別書とは違います。)スリランカでは宝石学を大学で学ぶ人は多いのですが、FGAの資格取得には費用がかかりすぎる(教材、試験代がこちらの物価から考えると非常に高い)ので、躊躇される方が多いです。(大学で学んだ場合はファンデーションコースが免除されるが、ディプロマはコースと試験を取らなければならない)
日本では宝石学の資格と言えば、GIA(米国)のGGを取得される方が多いと思います。
GIAの詳しいことはわかりませんが、FGAはビジネスとして宝石を扱うことより学問としての宝石といった色合いが強く、試験の内容も記述式です。勉強していて、途中何度も、「どうして、こんなに掘り下げた質問、癖のある質問が多いのか?」と腹ただしく思ったこともあります。会員のメーリングリストも鉱物的な質問や議論が多いように見受けられます。
さて、英国宝石学協会の宝石学会が10月26日、27日ロンドンのヒルトンホテル(ケンジントン)で開催されます。100周年に伴い、例年にないスピーカーの多さで、充実したものになるでしょう。次回はその会場の様子などをお伝えします。
片山新子(かたやま しんこ)、FGA
個人の楽天ブログ「スリランカ宝石留学物語」http://plaza.rakuten.co.jp/gemgasuki
個人ホームページ 宝石や内包物の写真を掲載「Ragems」www.ragems.com
アメリカ自然史博物館(ニューヨーク)とヒューストン自然史博物館が共同で企画した“ゴールド展”が10月25日(土)より六本木ヒルズ森タワー52階・森アーツセンターギャラリーで公開される。アメリカ国外で同展示がなされるのははじめて。
開催日時:2008年10月25日(土)〜2009年1月25日(日)

インターネットが存在しない1920年代に提唱されたこのプロセスは、消費者が限られた情報にした触れることができないことを前提としている。しかし現在は大量の情報をいつでも入手することができる。この変化によって消費者の購買プロセスもAIDMA理論の通りではなく、商品を“認知”し“興味”をもった後には複数の類似商品についての情報を集めて購入前に品質、価格、販売店を比較する「選択肢評価」行うようになったと考えられている(右図)。


しかし、弊社がお手伝いしているネット ショップの中には、異業種から参入をして1点数十万円という宝石類をコンスタントに売っている会社がある。ネット上で商品を認知し成約は来社の上ということも多いそうだが、この場合もネットあればこその成約である。そのような会社は他にもあるだろう。このようなネット ショップで宝飾品が売れた分、ジュエリー市場は拡大しているのだろうか?おそらくそうではあるまい。ネット ショップで買った分、百貨店や専門店で買わなくなっているのではないだろうか!? そして消費者向け電子商取引の市場規模が拡大している(右図)現在、この傾向はさらに顕著になる事が予想される。売れない売れないと訴えている小売店も多いが、このような現実を前に、ネット戦略などウチには関係ないですむものではあるまい。
10月7日、香港パシフィック プレースでサザビーズのジュエリー オークション[Magnificent Jewels & Jadeite]が開催された。
ダイアモンド リング5億9千万円
9月6日から9日までスリランカ、コロンボで「第18回スリランカ国際、宝石・宝飾展覧会」(Facets Sri Lanka 2008)が開催されました(写真右がオープニングセレモニーの様子)。スリランカの宝石業界最大の展示会であるこのショーは毎年9月上旬に開催されます。「インターナショナル」とされていますが、治安の悪化で、海外から出席される宝石関係の方々が少なく残念です。それでも今年は中国から10名ほどの視察団が訪れ、またミャンマーからも7業者がミャンマー産の美しい宝石や宝飾品を販売しておりました。中国は中産階級人口の増加で、宝石ニーズも高い国です。スリランカとしても中国へのビジネスの展開、また豊富な宝石が産出されるアフリカ、マダガスカルやタンザニアとの協力を視野に入れているようです。開会式で投資開発大臣(Minister of Enterprice Development&Investment Promotions)のスピーチでもその点を強調されており、「まずは自分たちが豊かになり、国全体が豊かになることで貧困層を撲滅させよう」とおっしゃっていました。あらためて、「あぁ、この国は発展途上国だったのだな〜」と感じました。こちらで生活していると、想像を超える金持ちや物乞いのいる状態をあたり前のように感じてしまいます。大臣のおっしゃる通り、この国から産出された宝石で、一部の人間だけでなく、富が全体に行渡る日(福祉の充実、雇用拡大、正当な賃金など)がくればいいと思いました。(←その前に今の物価の高騰を何とかしてほしいと一般市民は思っていると思いますが、ちょっと話が宝石からずれてしまいましたね。)
今年の「宝石展覧会」は111のブースが参加しています(写真左は会場内の様子。写真右下は出展業者)。コロンボ以外の地方の宝石業者の参加も多いため、見る側としてはいろいろなレベルの宝石や値段を一同に比べることが出来ます。また店ごとに特徴があり、10カラットを超えるサファイアやキャッツアイといった高級宝石を扱っている店や、クオーツやトパーズなど比較的値段が手頃な宝石、希少石を扱う店、ゴールドジュエリー、シルバージュエリーなど年々規模は大きくなっているようです。またこの期間中しか一般販売はしないとされている、ダイアモンドの販売もあります。 


