ジュエリーブログ,ニュース / ジェムランド

2010/6/29 火曜日

スリランカ宝石便り〜最終回〜

Filed under: ジュエリーコラム, スリランカからの宝石便り — ジェムランドeditor @ 13:57:04

20年以上続いたスリランカの内戦終結から1年が経過し、コロンボ市内でも観光客の姿を頻繁に見かけるようになりました。北海道くらいの大きさの島国に遺跡など多くの世界遺産があるスリランカに興味を持つ方も多いでしょう。今回は観光客がスリランカで宝石やジュエリーを買う時のポイントについてお話させてもらいます。

スリランカで代表的な宝石は「ブルー・サファイア」ですね。

スリランカ産のブルー・サファイアの青は明るいものが多いです。

せっかくスリランカに来たのだからスリランカで産出されたサファイアがほしいと思うかもしれませんが、最近はアフリカ産出のものも多く販売されています。

観光客が立ち寄るようなお店の売り子レベルでは、売っているサファイアがスリランカ産なのかマダガスカル産なのか、加熱処理されているのか無処理なのか、そんな違いは気にせず全て「スリランカで産出された天然(ナチュラル)なもの」と説明されます。

彼らは嘘を言っているわけではなく、そう信じている場合が多いので騙されたと思ってはいけません。「数億年前のアフリカとスリランカは同じ大陸でつながっていたのだから同じもの」と気にせず買うか、売り手の言葉を信じてスリランカ産と思うか。(もちろんスリランカ産である可能性もあります。)スリランカの宝石業者はサファイアの「産地」より値段と品質に関心があり、産地ごとに分けて管理することはないです。

美しいスリランカ産サファイアを「手頃な値段」で買えるというチャンスは観光客にはあまりないでしょう。売り手は観光客に良質な宝石を安く売ることはありません。安い場合は良質ではないか、合成石の可能性があります。では、それなりの値段を支払ったのだから、買った宝石が必ず良質であるか?宝石の値段は宝石のレベルにもよりますが、買い手のレベルでも決まってきます。あなたが「裕福な観光客」に見られた場合、目の前にサイズの大きなサファイアが並べられます。店によっては奥の金庫から物々しく出して、ひとつひとつ丁寧に時間をかけて見せてくれます。予算を聞かれますが、それには答えないで、色々なレベルのものを見たいと伝えれば良いでしょう。非加熱か加熱なのか、大きさ、色合いで値段は随分変わってきます。ここから値引き交渉の始まりです。もともと値切られるのを想定して高い値段を言っているので、思いっきり値切っても大丈夫です。相手の値段よりより3分の1か半分くらいから始めてみてください。こちらが値切らなくても、「あなたは友達だから」と最初に提示した値段より勝手に安くしてくれようとする売り手もいます。しかし、会って数分しかたたない人が本当の友達であるわけではないので、それでも値段が高いです。その場合はこちらも「友達」をアピールしてさらに値切って下さい。

値切っても本当に良質なもの、希少性の高いものは値段が思ったほど下がりません。

宝石は一期一会のように、そのひとつが出会いです。日本には入ってこないような色合いのサファイア(一般的には品質が悪いとされる)も売られていますので、色が気に入ればそれを購入されても良いでしょう。お店は薄暗く強いライトを使う場合も多いので、できれば窓際の自然光下の色も確認してください。

スリランカは宝石の産地だからどんな宝石でもあると思われるかもしれませんが、オパール、エメラルドは産出されません。お店には置かれていますが品質はあまり良くないのでお薦めできません。サファイアより安く買える宝石なら、ガーネットやスピネル、クリソベリルなどが良いでしょう。同じ名前の宝石でも色が違いますので、様々な色を並べて比べてみて下さい。

さて、購入した宝石が合成石でないか?ニセモノではないか?それをスリランカで調べるにはどうしたら良いでしょう?

スリランカの宝石関係を取りまとめているのが政府機関の[National Gems and Jwellery Authority]です。ここでは、外国人であれば鑑別を無料でしてもらえます。鑑別書の発行には料金がかかりますが、コロンボで購入した場合はお店の人にここの鑑別書をつけてもらうと良いでしょう。(ただし高価なものに限られると思います。)自分で宝石を持ち込むことも可能です。(25 Gall Face Terrace,コロンボ3/ゴールフェイスホテルの近くです。)お店の人が発行するのは、保証書であり鑑別書ではありません。

サファイアの加熱か非加熱については、FT-IR(フーリエ赤外分光分析)鑑別機器を持っている鑑別会社「Colombo Gemmological Institute(コロンボ4)」での鑑別が可能です。「非加熱サファイア」を購入される場合は、このFT-IRのデータのついた鑑別書をお店の人を通して取得してもらっても良いと思います。(ただ旅行などの限られた日数では難しいかもしれません。)

この回で「スリランカ宝石便り」を終了させて頂きます。定期的に投稿できなくてすみませんでした。この記事でスリランカの宝石に関心を持って頂ければ幸いです。福本修先生とは、私が英国宝石学協会のFGAの勉強をしている時にメールで何度も質問をさせて頂いたのが出会いです。こちらのWEBから私のブログ(スリランカ宝石留学物語)に来て下さる方もいて嬉しい限りです。本当にありがとうございます。

皆様がスリランカで素敵な宝石との出会いがありますことをお祈りしています。

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片山新子、FGA

2009/11/3 火曜日

スリランカ宝石便り その26 〜第101回英国宝石学協会・宝石学会〜

Filed under: スリランカからの宝石便り — shinko @ 17:19:37

今年10月18日、英国宝石学協会の宝石学会がロンドンのヒルトンホテル・サウスケンジントンで開催されました。昨年は100周年ということで二日間行われましたが、今年は例年通り一日のみの開催でした。今年のテーマは「Showing Colour〜色を見せる〜」ということで、色石について9人のスピーカーの方々が様々な角度から色の魅力や鑑別方法などについて話をしました。

英国宝石学協会・第101回宝石学会 

 

 

スピーカーの一人、アントワネット・マトリンズ女史(Ms.Antoinette Matlins)は宝石を購入する時のポイントをわかりやすく書いた本を出版されています。今回はカラーチェルシーフィルターを活用した色石の区別の方法について話をされました。また、カール・シュメツアー博士(Dr.Karl Schmetzer)によるカラーチェンジ・ガーネットの色の原因について、トーマス・ハインシュワン氏(Mr.Thomas Hainschwang)のカラー・ダイアモンドの光学的に見た特徴の話などがあり、図や写真を多く用いた説明でわかりやすく解説されていました。

 

 

一番興味深かったのは、ルビー、サファイア、エメラルドなど高級宝石の色のグレードや輝き、内包物の在り方によってどのように値段が変わっていくのかといったことをパソコンで検索して調べることができるといった話です。色石はダイアモンドのようにはっきりとグレード分けして、値段を表示することが難しい宝石です。

 

私はサファイアを扱っていますが、色や輝き、内包物の在り方で個人的に区別することはありますが、微妙な光の違いで色の表情が変化する色石(高級宝石だけでなく、ガーネットやスピネルなども)の場合、グレードに選別しきれない場合が現実的に多いです。また無処理のサファイア場合、内包物の美しさも価値あるものと考えますし、多数の人が美しいと感じるものや加熱などの処理の有無、希少性のある色味などで価値が決まるものだと思います。(これは個人的な見解です。)

 

実際には、市場に多く出ている加熱処理されたサファイア、ルビーでカリブレイト(大きさ、形を揃えて販売されているもの)は、色の選別をしっかり行うことが業者にとっては不可欠でしょう。

 

今年も様々な国のFGAの人とお会いし、鑑別する知識と経験をさらに深めて行かなければならないと感じました。

宝石学会のエピソードなどはブログに書いておりますので、せひ見てください。

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片山新子FGA

2009/6/30 火曜日

スリランカ宝石便り その25 〜スリランカ宝石採掘の状況(その2)〜

Filed under: スリランカからの宝石便り — shinko @ 0:48:20

6月21日のスリランカの新聞、「サンデー・タイムズ」に宝石鉱山の現状が大きく取り上げられていました。世界遺産にも登録されている仏歯寺のある古都キャンデイから北へ行った所にあるマータレという採掘現場の鉱山主の声です。この地域は良質なガーネットが採掘される場所としても有名なのですが、世界的な不況で原石の価格が低迷し、マータレ地域一帯に2千も存在した採掘現場は今では10しかないということです。これはマータレに限ったことではなく、不況の中で採掘量が需要以上に増えれば価値と価格は下がってしまいます。その為に採掘を差し控える鉱山主も多いですし、価格を下げてまで販売しない業者もいます。良質な宝石は景気が回復されれば必ずニーズがあるからでしょう。

 怒りの矛先はスリランカの政府機関「National Gem and Jewellery Authority」にも向けられています。税金の値上げ、不可解な規則や汚職。宝石の採掘や宝石を売買するディーラーはライセンスを取得しなければなりません。過去にそのライセンスを安易に発行した為に取得者が増えたことへの不満もあります。昨年の宝石ディーラーのライセンス取得者は4794人、鉱山の採掘は4204人、研摩業者は194人でした。今年はこの取得条件を厳しくして数を減らす動きが出ています。

また、これまでの大手輸出相手国であった「米国、香港、日本」ではなく、新たに「インド、中国、ロシア」へと市場の軸が動いています。スリランカの業者と話をすると、日本のバブルの頃をなつかしんでいたり、「紳士的な交渉のできる日本人」が一番ビジネスし易いと言います。あるディーラーからインドに輸出される前の宝石を見せてもらいましたが、コロンボの宝石店では見ることのない、色の美しいブルーサファイアが多くありました。サイズも値段もマハラジャ級でしたが・・・。

 

片山新子(かたやま しんこ)、FGA

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2009/6/8 月曜日

スリランカ宝石便り その24 〜スリランカ宝石採掘の状況(その1)〜

Filed under: スリランカからの宝石便り — shinko @ 13:29:23

スリランカは日本の北海道くらいの大きさの島国です。

熱帯性気候で一年を通して暖かく季節は雨季と乾季にわかれます。

5月から8月にかけては島の南西から南、中央、西にかけての範囲が雨季になり、10月から1月にかけては北東から入り込んだモンスーンで西部や北部が雨季になります。つまり同時期に島の右と左で気候が違ってきます。島の中央の山岳地帯は紅茶が広く栽培されていますが、気温が低く、夜になると冬のように冷え込みます。

 スリランカの地図

その中央を中心に東部から南西部にかけた地域はHighland Southwestern complexと呼ばれ、

中央から南は様々な種類の宝石が採掘される場所となっています。 

今回は、山岳地帯を中心に宝石採掘現場を見学に行きました。

 

 鉱山1 機械堀り現場

 

 スリランカは昔ながらのピット(pits)方式(井戸のように縦穴に掘っていく)が主流ですが、広大な場所では大規模に機械を入れて20〜30メートルほど掘っていく方法が取られています。砂利や粘土層を掘っていき宝石層に辿り着きますます。コランダム、スピネル、ガーネット、クリソベリルが採掘されます。 

 

鉱山 川堀り現場

 スリランカのサファイアやスピネルは二次鉱床の漂砂鉱床で、結晶の形を失った小石のような状態で発見されます。川底を掘り下げる方法もされていますが、採掘される宝石は小さいものが多いです。環境破壊の観点から川の採掘は禁止されています。 

 

 

片山新子(かたやま しんこ)、FGA

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(↑採掘現場のエピソードなども書いています。)

2009/5/18 月曜日

スリランカ宝石便り その23 〜スリランカに平和が戻った〜

Filed under: スリランカからの宝石便り — shinko @ 16:24:19

今日は宝石の話ではないのですが、スリランカにとって歴史的に大切な日なので、その話を書きます。

これまでこの国にとって、「平和」とは絵に描いた餅のようなものでした。

今年に入り政府は大規模な戦闘を北部・東部で行い、ついに今月16日、反政府武装勢力「タミル・イーラム解放のトラ」(LTTE)を制圧したという勝利宣言をしました。
多くの避難していた一般人が巻き込まれ、そのような政府のやり方に国際社会からも批判が出ていました。話合いによる「平和協定」より、徹底的に相手を壊滅させる選択を政府は選んだのです。その結果、LTTEは壊滅状態で敗北を宣言しました。コロンボ市内でも17日の日曜日の朝は、街の至るところで終戦を祝う爆竹が鳴り響きました。
 

スリランカには、仏教を信仰する多数のシンハラ人、ヒンドゥー教を信仰する少数民族のタミール人、そしてモスリムの人たちが住んでいます。宝石ビジネスの多くはモスリムで、その次にシンハラ人です。(そう言えばタミール人の宝石商は会ったことがないですね。)
スリランカにいるタミール人が全てLTTEを支援していたというわけではありません。多くのタミール人はLTTEのゲリラ活動に批判的でした。戦闘地から離れているコロンボでも自爆テロが繰り返され、道路閉鎖や検問、市民生活には多くの支障がありました。観光が国の重要な財源であり、ビジネスにも影響されるので、早く戦争が終わり、観光客が戻ってくることをスリランカ人は強く願ってきました。

宝石店が多く入った、国の産業事業のひとつであるワールド・トレード・センターも多くの宝石店が店を閉めている状態です。(気の毒なくらい客がいません。)LTTEは壊滅状態ですが、個人的な自爆テロの危険性はまだ指摘されています。

多民族をどう平等に扱っていくのかという多くの課題がある政府ですが、25年続いた内戦が終わり、本当の平和続くことを祈ります。 

 終戦を祝う国旗 終戦を祝う為、街中に国旗が飾られています。

片山新子(かたやま しんこ)、FGA

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2009/3/31 火曜日

スリランカ宝石便り その22 〜National Gem&Jewellery Show〜

Filed under: スリランカからの宝石便り — shinko @ 21:48:36

3月27日から29日まで、コロンボ市内のBMICHでNational Gem&JewelleryShow(スリランカ Gem & Jewellery協会主催)が開催されました。

このような宝石展示会はスリランカでは3つあります。9月のFacetsが国際展示会として最大規模で、その次に12月のスリランカ宝石学協会主催の宝石と鉱物を中心としたもの、そしてこの度のスリランカ人を対象としたものです。今回の参加は約50ブースで、残念ながら見ごたえのある宝石は少なく、どちらかというと産出量の多い手頃な値段のものが多く並べられていました。

 会場の様子

Facetsのように海外のバイヤーではなく、スリランカ人の若い層や遊び心のある裕福層が対象の為、ジュエリーはシルバーアクセサリーのようなものが主流に販売されていました。一般的にスリランカでは、宝石を使用したジュエリーより市場でいつでも換金可能な22金のネックレスやブレスレットを持つ人が多いです。しかし若い世代を中心に、大ぶりな宝石を加工した手頃なシルバーアクセサリーにも人気が出てきて、色とりどりの宝石を使ったピアスなどを販売しているお店のブースは賑わっていました。

また宝石やジュエリーに限らず、研摩機械の販売や研摩工場の紹介、コランダムの熱処理の機械が販売されているのも、やはりスリランカだなと感じました。

宝石研摩用の機械

片山新子(かたやま しんこ)、FGA

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(Gem Showのこぼれ話などを書いています)

2009/3/16 月曜日

スリランカ宝石便り その21 〜コーネルピンとエンスタタイト〜

宝石の中でもあまり聞きなれない二つの宝石を今回はご紹介します。

どちらも希少石として、宝石質のものがスリランカで産出されます。しかし色合いや硬度の低さを考えるとジュエリーには難しく、コレクターとして研摩される程度です。こちらでも市場に出てくることは少ないのですが、このふたつを比べた場合コーネルピンの方が見かける機会が多いです。スリランカ産のコーネルピンは鉄分が多く、ブラウンや暗緑色、黒っぽいものが主流です。

 

エンスタタイトもコーネルピンに似たような色合いのものが多いのですが、中にはクロムを起因とした美しい緑色、ダイアモンドのように無色のものがあります。どちらの宝石も一条の光の帯が出るキャッツアイも存在します。 無色のエンスタタイト

スリランカではこの二つの宝石は同じ漂砂鉱床から産出されます。宝石学的特徴から見れば、どちらも比重が近く屈折率も同じです。

コーネルピン  比重3.32、屈折率1.66-1.68(複屈折量0.013) 硬度6.5

エンスタタイト 比重3.27、屈折率1.66-1.67(複屈折量0.010) 硬度5.5

 このように見た目も屈折率も近い宝石をどのように区別したら良いでしょうか?

まずは丁寧に屈折率を計り、複屈折量の違いを見ます。しかしこの数値も近いので、これで確実な鑑別とはいかないのが現実です。顕微鏡の拡大検査では、コーネルピンはルチル、アパタイト,ジルコンといった鉱物が見られます。またコーネルピンは多色性が強く、方向によって色相が違うと言われています。(しかし私の経験では、それほどはっきりとは多色性が確認できないことが多いです。)その他の確実な鑑別としては、エンスタタイトは特徴的なスペクトラムを持ちます。緑の部分(506nm)に光の吸収が確認できます。

あまり見かけることのない宝石ですが、共通点の多い宝石を比べてみるのも楽しいものです。

片山新子、FGA

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2009/3/1 日曜日

スリランカ宝石便り その20 〜スリランカ特有の宝石、シンハライト〜

Filed under: スリランカからの宝石便り — shinko @ 20:05:47

シンハライトという言葉はスリランカという国を指す「シンハラ」という言葉が由来です。屈折率や比重が近いことから長い間、ペリドットとして扱われていました。

   シンハライト  屈折率1.67−1.71  比重3.48

   ペリドット     屈折率1.64−1.69  比重3.34 

複屈折量はどちらも同じく0.036と大変大きいです。その為、顕微鏡でテーブル面から覗いた時にパビリオンのファセットが二重になってみえます。

ご存知、ペリドットの色はオリーブのような緑色ですが、シンハライトは淡い黄色がかった茶系から帯緑褐色、濃い褐色です。この色の違いは含まれる鉄分によるもので、色の濃いものほど比重が重くなります。希少石のひとつとして、ルースコレクターには魅力的な宝石となっています。宝石質のシンハライトはスリランカで産出されますが、ペリドットはあまり産出されません。(ペリドットが産出された記録はありますが、現在のスリランカの市場で取引されているペリドットの多くは近隣諸国から来たものでしょう)。

スリランカは砂礫層なので、産出されるシンハライトは丸くその結晶の形は失われています。シンハライトの原石シンハライトの原石

研摩された後は、ガラス状の光沢な為、照りのある強い輝きがあります。 研摩された後のシンハライト

 

残念ながらジュエリーとしてシンハライトはあまり使われていません。確かに硬度が6.5(ペリドットも同じ)とあまり高くありません。しかし、美しく研摩されたシンハライトは輝きがあって大変魅力的なジュエリーになると思われます。

ペリドットとの違いを見分ける鑑別方法→ブログを参照して下さい。http://plaza.rakuten.co.jp/gemgasuki/diary/200812300000/

片山新子(かたやま しんこ)、FGA

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2009/2/3 火曜日

スリランカ宝石便り〜その18〜

Filed under: スリランカからの宝石便り — shinko @ 6:56:39

スリランカの商業都市、コロンボから南に車で2時間ほど行ったところにベルワラという街があります。ここはスリランカ国内に限らず近隣諸国、さらにはアフリカから産出された宝石が持ち込まれ、活発に商いがされています。スリランカで有名な宝石産地、ラトゥナプラでは原石の売買が中心ですが、ここは研摩されたものが、ロットで売られます。観光客相手というよりは、国内外の宝石ディーラーが買い付けにくる場所です。

スリランカ、ベルワラマーケットは毎週水曜、土曜、日曜日の午前中に開かれ、スリランカのディーラーたちは白い色の服(サロン)を着ます。これは、木綿のシンプルな素材で値段も手頃です。金のあるものもないものも等しく商いをするという目的で、相手の服装でレベルを決めないという理由からです。マーケットがスタートすると、路上は白い色を着た男性で埋め尽くされます。私のような外国人は別として、ビジネスの中心は男性です。

ベルワラの一角、チャイナ・フォートという場所に100近いオフィスが並んだ通りがあり、そのオフィスの広さは畳3〜4.5畳ほどの広さ(狭さ?)です。その狭いオフィスに座ると、次から次へ宝石ディーラーが入ってきて、宝石をどんどんどんどん見せてくれます。

自分がどういうものを探しているのか?ということを伝えれば、その種類の宝石が並べられます。明確にしなければ、日本人ということで、高級なサファイアやキャッツアイが並べられます。

ベルワラ売る側は、鉱山主、鉱山からの宝石を預かってきたディーラー、海外からの宝石を扱うディーラー、そしてベルワラの商人で過去に買い付けたものを売るディーラーと様々です。服装で相手を見てはいけないのですが、その扱っている宝石のレベルで、そのディーラーの力がわかります。通常宝石は白い紙に包まれているのですが、その紙の傷み具合で、どのくらいこの宝石を持っているか、つまり売れてない状況かを読み取り、それを値段交渉に役立てていきます。相手に値段を聞けば、「あり得ないような値段」を言われるので、こちらの希望価格の下あたりを初めに伝えて、そこから交渉を始めていった方がいいでしょう。もちろん予め相場を知っていないといけませんが。この方法が正しいかどうかはわかりませんが、私のような一見弱そうに見える(?)女性の場合は、必ず値段をかなり高めに言われてしまいます。これも買い付けの回数を増やし、経験を積んで行くしかないと思います。

もし旅行でスリランカに来て、宝石を買う場合は、きちんとした宝石店で購入されることをお進めします。マーケットでは、観光客ということで高く買わされるか、ガラスをつかまされてしまう場合もあります。宝石は人の手を渡ってきているので、売る側も悪気がなくてもガラスが混じったロットを扱ってしまう場合があるからです。

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2008/12/2 火曜日

スリランカ宝石便り〜その17〜

Filed under: スリランカからの宝石便り — shinko @ 10:40:03

081202.jpgスリランカの宝石として筆頭に上がるブルーサファイア。その歴史は古く、セイロンサファイアとして、西洋諸国をはじめ多くの国のロイヤルファミリーに愛されてきました。太古の時代から採掘されているサファイア、飛行機もなかった時代に数々の宝石商人の手を経て遠い西洋諸国にどのように運ばれていったのだろうかと考えるだけで、また違った角度から宝石を楽しむことができます。

ロンドンでお薦めの場所のひとつにヴィクトリア&アルーバート博物館(1852年に開館)があります。サウスケンジントンに位置する世界的にも価値あるもので、ヴィクトリア時代のコレクションをはじめ、絵画、彫刻、写真、ガラス工芸品、金属製品、陶磁器、宝石・貴金属、建築関連、アジア美術、衣装、アンティーク家具、中世から近代の武器などが展示されており、大変見ごたえのある美術館です。

ジュエリー・ギャラリーでは、500年にわたる歴史的で価値の高い宝飾品が並べられており、その数は約4千点にのぼります。細工されたデザインは美しく、ひとつひとつの繊細な技にため息が出てくると共に、このジュエリーを身に着けた王族や貴族の華やかな世界にタイムスリップしたような気分になります。

興味深い点は、その宝石の大きさや色の良さ。内包物など天然の証も肉眼で確認できるほどですが、処理技術もなかった時代、本当に色や輝きの良いものは限られていたと思います。地位ある方々しか持つことのできなかった宝石。宝石とは本来そういうものであるのかもしれない・・・とコレクションを見ながら感じました。

目に止まったものにサファイアをインタグリオしたペンダントがあります。1580年のイギリスのもので、全体で5センチ程度になる存在感あるものです。産地は不明ですが、おそらくスリランカから中東を経由してヨーロッパに渡ったサファイアかもしれません。しばらくそれを見つめながら、スリランカのラトゥナプラの南国の暑さや、懸命に働く鉱夫の姿などが浮かんできました。

写真・The Knyvett Seal (1580年)

片山新子(かたやま しんこ) FGA
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(↑英国宝石学協会・学会に参加した個人的な出来事をブログに書いています。)
個人ホームページ 宝石や内包物の写真を掲載 「Ragems」 

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