十字架にかけられて死んだイエス・キリストが三日目に復活したことを記念・記憶する復活祭(イースター)はキリスト教において最も重要な祭のひとつといえるだろう。
2014年の復活祭は西方教会・東方教会共に4月20日とまもなくだが、復活祭における重要なアイテムとしてイースター・エッグを挙げることができる。これは豊壌のシンボルたる卵をゆでて飾りつけや彩色をしたもので、動かない卵から生命が生まれることから死と命を象徴している。
イースター・エッグを友情や愛情の証として贈る伝統が多くの地で見られるが、ロシア皇室では精緻な七宝技術を駆使したことで知られるカール ファベルジェの工房で制作された史上最も高価なイースター・エッグが用いられた。
時折競売史上で高値で取引されて話題を呼ぶ。
たとえば2004年にはフォーブス家所有のファベルジェのイースター・エッグ9個が出品予定だったが、実際にはロシアの富豪ヴィクター ヴェクスバーグ氏が一括で購入し、その取引価格は非公開ながら100億円以上と推定されている。
あるいは2007年にはロスチャイルド家で所有していたファベルジェのイースターエッグが18億円で落札されている。
ファベルジェの工房で生み出されたイースター・エッグは54個(現存するのは50個)。内8個は所在不明であったが、先月この中のひとつが意外な場所にあった事が判明した。
アメリカ中西部の男性が以前“のみの市”にて約140万円(14,000米ドル)で購入していた金色の卵型オブジェクトがファベルジェのイースター・エッグだったのだ。所有者の男性は匿名を希望しているが、オブジェクトはスクラップ(鋳潰す)にして再流通させ、差額に500ドルも儲かれば良しとして購入したという。
その後「egg」「Vacheron Constantin」などをキーワードにグーグルで検索をしたところ手元にあるオブジェクトがファベルジェのイースター・エッグではないかと思うに至り、ロンドンの専門家に鑑定を依頼をしたところThird Imperial Easter Eggと呼ばれるファベルジェのイースター・エッグだと分かったという。
推定市場価値は30億円。
Third Imperial Easter Eggは1887年の復活祭に皇帝アレクサンドル三世が皇后マリア・フョードロヴナに贈ったもの。
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なかなかヒットのでないジュエリーメーカーにあって、株式会社パールハンズ(山梨県中巨摩郡。電話:055-228-8036)の開発したグラデーションブローチ(写真下)が好調だ。
グラデーション・ブローチは、微細化(後段参照)したシルバー(SV950:Ag950, Pd20, Cu30)に白、金、ピンクの美しいグラデーションを表現したブローチ用途のパール用空枠。ピンクのめっきには表面にはクロメート処理(※2)を施し変色を遅らせる工夫をしている。
●同社の発表した特徴は次の通り
◎硫化しにくい素材を使用
- 地金を微細化し、また割金にパラジウムを使用することにより通常のSV925より延性・展性に優れ、硫化しにくい地金を使用。
通常の地金(1um=0.001ミリメートル)
微細化した地金(1um=0.001ミリメートル)
◎めっきのニッケルフリー
- 地金の結晶を細かく砕き微細化した表面のため 下地にニッケルを使用することなく、直接ロジウムめっきをかけても地金本来の光沢を維持することが出来る。
◎赤くならない金メッキを使用
- 通常の金メッキは割金にCuを混ぜているため、めっき後ある一定の期間で酸化銅が表面に皮膜を作り赤くなります。
- グラデーションめっきの金メッキは 割金にCuを使用せず酸化皮膜の発生を抑えました。さらに、わずかにCoを混ぜることにより色を損なうことなくめっきの表面を硬化しました。
◎ピンクめっき
- 元素の中で 赤を色として持つものは Cu しかありません。
- そのためピンクでは、どうしても割金にCuを使用します。
- 変色を出来るだけ遅らせるためにクロメート処理(※2)を表面に施しています。
※2:クロメート処理とは
- クロム酸を用いて薄い酸化皮膜をつくり金属を不動態化することを指します。
- 不動態とは「金属が予期される化学反応性を失った状態」のことで、反応性を失うと溶液や酸に侵され(腐食し)にくくなります。
- クロメート処理とは、金属の性質を失っているごく薄い皮膜をつくるということです。
★グラデーションブローチの取扱い等のお問合せは以下まで。
株式会社パールハンズ
〒409−3867
山梨県中巨摩郡昭和町清水新居407−1
電話: 055-228-8036
メール:
関連:パールハンズ、プラチナの“血統書”にこだわったPT900の地金を開発
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株式会社パールハンズ(山梨県中巨摩郡。電話055−228−8036)は割金にイリジウムを10%使用したPT900の地金、ル・グラン・プラチナを新たに開発し、OEM受注を開始した。主として小売店からのブライダル系の受注を見込んでいる。
同社の開発したル・グラン・プラチナはIRIDPLATの刻印が押せる唯一のプラチナ合金であるのみならず、ビッカーズ硬度はHv130と、日本で主流のパラジウムを割金とするPT900の硬度Hv70と比較して圧倒的に高い。この為、従来のPT900ジュエリーを日常的に使用した際に発生しやすい爪の磨耗によるメレーの飛びや、重い荷物を持ち上げただけで腕下が変形するといった消費者にとっての不利益を防ぎやすいという利点がある。
日本のPT900ジュエリーでパラジウム割りが一般的なのは、イリジウム割りと比較して加工が容易なのが理由。パラジウムの融点は1554℃だがイリジウムは2443℃だから500℃の以上高い温度の炉が必要であり、また硬度が高いル・グラン・プラチナの吹き上がりを加工する際には技術と時間が必要となるからだ。同社では高い技術力でこれらの問題を克服し、今回の発表となった。
パールハンズによれば、この合金で宝飾品を作っている会社は国内では同社のみで、取り扱っている地金商もないはずだという。
宝飾品需要が伸び悩む中、メーカーらしく技術力で勝負をする同社のル・グラン・プラチナが小売店の、ひいては消費者の心を捉えることができるか注目される。
>> ル・グラン・プラチナの補完情報や山梨県工業技術センターによる硬度試験の結果(pdf)
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中国で製造、アメリカで輸入販売されている安価なジュエリー・アクセサリーから有害物質のカドミウムが検出されたとして、米消費者製品安全委員会(CPSC)は、これらの製品を破棄するよう指導を行った。
検査はオハイオ州の大学が実施、アクセサリー類103個のうち、12個から10%を越える含有率でカドミウムが検出されたというもの。
これを受け、大手小売りチェーンのウォルマートは該当する商品を店頭から撤去する事を決めた。
カドミウムは、子供用アクセサリーへの使用が禁じられた鉛の代用として使用されたと見られる。 子供が口に含む可能性があるから鉛の使用が禁じられた訳だが、その代用として、やはり口に含めば有害であるカドミウムを、法律に使用禁止が明記されていないからといって使用する中国メーカーの商業モラルには驚くばかりだ。
この問題はアメリカのテレビニュースで大きく報道がなされたが、消費者庁はこれを受け日本国内に輸入されている類似商品やおもちゃなど、子供が口に含む可能性のある商品について、1月から3月までの間にカドミウム含有の有無を調査すると発表した。
小さなお子様のおられる家庭ではご注意を。
イギリスのスタフォードシャー州で発掘作業を続ける考古学者チームは2009年9月末、ガーネットが留められた装飾品を発見したと発表した。
これは剣のさやを飾る装飾品で、アングロサクソン時代の金の財宝群として過去最大の発見(本年7月)となった遺跡、The Staffordshire Hoard(スタフォードシャーの財宝) に含まれていた。制作年代は西暦7,8世紀で、アングロサクソン七王国のひとつ、マーシア王国の財宝だと推定されている。
この遺跡からは今回発表されたガーネットをはめた装飾品の他にも1,500以上の品々が見つかっている。ほとんどが武具で、金製も含まれる。
11月3日より大英博物館にて陳列される。
以下のサイトには発見された金製装飾品を多く見ることができる。http://www.staffordshirehoard.org.uk/
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先に共にダイアモンド鉱山を所有するBHPビリトンとリオ ティントによる鉄鉱石事業の統合についてお伝えしたが、今度はスイスの資源大手エクストラータによるイギリスの資源大手アングロ・アメリカンに対する合併提案がなされた。
合併が実現すればおよそ6兆5,000億円の規模の会社となり、BHPビリトンに匹敵する。
アングロ・アメリカンはジュエリー業界に馴染み深い資源会社だ。傘下のアングロ・プラチナは新産プラチナ(市場から回収されて再流通するのではなく、新たに鉱山より産出されたプラチナ)の40%弱を産出している他、デビアスの株式を45%保有している。
ちなみに、アングロ・アメリカンはアーネスト・オッペンハイマーによって創設された会社だ。同氏はデビアスの創業者セシル・ローズの死後、社業が落ち込んだデビアスを建て直し、その基盤を確固たるものとしたことで知られており、現在のデビアス会長ニコラス オッペンハイマーはその孫にあたる。
なお、デビアスは2001年にある種のMBO(マネジメント・バイアウト:経営陣による買収)を実施している。オッペンハイマー一族が45%、アングロ・アメリカンが45%、デブズワナが10%の株式を所有するデビアス・インベストメント(DBI)を設立し、同社がデビアスの発行済み株式を買収して、私会社(※)へと移行したのだ。この改革によりデビアスとアングロ・アメリカンは従来の株式の持ち合い関係がなくなり、アングロ・アメリカンはデビアス株を持つが、デビアスはアングロ・アメリカンの株を失った。この経営改革の理由は新しい事業計画への株主の介入を防ぎ、経営計画の迅速な実施を可能にするため、など諸説あるが、根底には非デビアス系のダイアモンド原石の流通が強まり、ダイアモンド業界におけるスーパーパワーだったデビアスの体力が落ちていることに対応するためであることは間違いないだろう。
※:私会社
イギリスの会社法では、会社は、公開会社(public company)と私会社(private company)のふたつに大別される。私会社に有価証券の公募は許されていないが、公開会社のような経営上の情報開示は求められていない。
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デビアスの販売部門、DTC(ダイヤモンド・トレーディング・カンパニー)による2009年6月のサイト※では、420億円程度のダイアモンド原石が販売されたもよう。
世界最大のダイアモンド研磨地インドで停止していたダイアモンドの研磨が一部で再開されたことを受けて、販売量は前回と比べておよそ2倍となったが、それでも業界予測よりは1割程度少ない販売量だった。
※サイト
DTCによるダイアモンド原石の販売は、DTCが選定したサイトホルダーと呼ばれる招待者に限定して行われる。この販売会をサイトと呼ぶ。
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11月19日、サザビーズのジュエリー オークション[Magnificent Jewels]がジュネーブで開催された。
注目された天然真珠のネックレス(写真右)の落札金額は約1億2500万円(1,594,500 CHF)。
このネックレスは8.5から14.7mmの球形ナチュラル パール41珠からなる48cmで、クラスプには2.7ctsと推定されるラウンド カットのエメラルドが留められている。スイス ジェモロジカル インスティチュート (SSEF)などの鑑別書付き。
リーマンブラザースの前CEO夫妻がクリスティーズに出品した絵画コレクションの競売で落札推定価格の下限に満たない入札があり、底値買いするバイヤーが目立ったニュースは記憶に新しいが、宝飾オークションでも金融危機以後高額品の落札価格が伸び悩んでいる。このネックレス、1億円を超えるのだからもちろん高額だけれど、それでも昨年の暮れに落札されたウィンザー公爵夫人の天然真珠ネックレスに約4億円の値が付いた事と比べると、前の持ち主のネームバリューの違い(今回のネックレスは英国の“貴族”)、真珠の品質の違いを勘案してもお値打ち価格だろう。今は高額品を底値買いできるチャンスかもしれない。
その他、ハイエンドのジュエリーオークションには珍しくブルー トパーズをふんだんに用いたネックレスとイヤ クリップのデミ・パリュール(写真左右。右画像はクリックで拡大)が出品された。落札価格はほぼ推定落札価格上限の約540万円(68,500スイス フラン)。ハイエンド マーケットには珍しいという意味でのブルートパーズの希少性が高値につながったか。
ダイアモンドでは、38.06cts、カラーはSからZの間、クラリティはVS2というクッション シェープの裸石が約4000万円(506,500 スイス フラン)で落札された。1キャラット当たりではおよそ105万円となる。
イスラエル考古学庁(イスラエル・アンティーク・オーソリティ)は10日、エルサレムの旧市街に位置する城壁近くにある駐車場の下から、2000年前の金製イヤリングを発掘したと発表した。
この発掘プロジェクトのディレクター、ドロン ベン アミ(Doron Ben-Ami)博士によると、イヤリングはビザンチン時代の西暦4-5世紀に建てられた建物跡を発掘途中に発見された。イヤリングの制作年代がローマ時代(紀元前1から4世紀)であることから、代々相続されていたものではないかという。
イヤリングはゴールド製で、真珠とエメラルドが使用されている。真珠は古くから天然真珠の産地として知られる地中海産、エメラルドは歴史的産出地であるエジプト産である可能性が高いと思われる。
博士は更に次のようにも述べている。
「エジプトのファイユーム(Fayum)で発見された墓にあったミイラの装飾と して書かれた肖像画には、豪華な衣装とジュエリーを身にまとった人物が書かれているが、ジュエリーには真珠とエメラルドが用いられている。今回発見されたイヤリングとの類似は驚くほどではないか。」
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アメリカ自然史博物館(ニューヨーク)とヒューストン自然史博物館が共同で企画した“ゴールド展”が10月25日(土)より六本木ヒルズ森タワー52階・森アーツセンターギャラリーで公開される。アメリカ国外で同展示がなされるのははじめて。
展示は次の6つのセクションから構成され、金の結晶や大きな金塊、13世紀イランのイヤリング、ファベルジェのイースター・エッグ、難破船から引きあげられた財宝、ティファニーやカルティエなどのゴールド・コレクションなどが公開される他、30平方メートルの金箔貼りの部屋も用意された。
- 天然の金 AURUM NATURAE
- 比類なき金 INCOMPARABLE GOLD
- 黄金時代 GOLDEN AGES
- 失われし宝物 LOST AND FOUND
- 金本位制 GOLD STANDARD
- 努力の証として授与される金 GOLDEN ACHIEVEMENT
開催日時:2008年10月25日(土)〜2009年1月25日(日)
開館時間:10:00〜20:00
主催者公式サイト(森アーツセンター)
主催者公式サイト(TBS)
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