スリランカ宝石便り〜その17〜
スリランカの宝石として筆頭に上がるブルーサファイア。その歴史は古く、セイロンサファイアとして、西洋諸国をはじめ多くの国のロイヤルファミリーに愛されてきました。太古の時代から採掘されているサファイア、飛行機もなかった時代に数々の宝石商人の手を経て遠い西洋諸国にどのように運ばれていったのだろうかと考えるだけで、また違った角度から宝石を楽しむことができます。
ロンドンでお薦めの場所のひとつにヴィクトリア&アルーバート博物館(1852年に開館)があります。サウスケンジントンに位置する世界的にも価値あるもので、ヴィクトリア時代のコレクションをはじめ、絵画、彫刻、写真、ガラス工芸品、金属製品、陶磁器、宝石・貴金属、建築関連、アジア美術、衣装、アンティーク家具、中世から近代の武器などが展示されており、大変見ごたえのある美術館です。
ジュエリー・ギャラリーでは、500年にわたる歴史的で価値の高い宝飾品が並べられており、その数は約4千点にのぼります。細工されたデザインは美しく、ひとつひとつの繊細な技にため息が出てくると共に、このジュエリーを身に着けた王族や貴族の華やかな世界にタイムスリップしたような気分になります。
興味深い点は、その宝石の大きさや色の良さ。内包物など天然の証も肉眼で確認できるほどですが、処理技術もなかった時代、本当に色や輝きの良いものは限られていたと思います。地位ある方々しか持つことのできなかった宝石。宝石とは本来そういうものであるのかもしれない・・・とコレクションを見ながら感じました。
目に止まったものにサファイアをインタグリオしたペンダントがあります。1580年のイギリスのもので、全体で5センチ程度になる存在感あるものです。産地は不明ですが、おそらくスリランカから中東を経由してヨーロッパに渡ったサファイアかもしれません。しばらくそれを見つめながら、スリランカのラトゥナプラの南国の暑さや、懸命に働く鉱夫の姿などが浮かんできました。
写真・The Knyvett Seal (1580年)
片山新子(かたやま しんこ) FGA
個人の楽天ブログ「スリランカ宝石留学物語」
(↑英国宝石学協会・学会に参加した個人的な出来事をブログに書いています。)
個人ホームページ 宝石や内包物の写真を掲載 「Ragems」