スリランカからの宝石便り 〜その9〜 ジルコン
ジルコンという音の響きからダイアモンドのイミテーションにされることもあります。しかし、硬度が6.5から7.5とダイアモンドと比べて低い為、10倍レンズで覗くとファセットにキズなどがあり、簡単に見分けがつきます。スリランカのマータラで採掘される無色のジルコンは、「セイロンダイアモンド」と呼ばれています。しかし、こう言われても本物のダイアモンドだと思って買う人はいないでしょう。最近は無色のジルコンも発見されにくくなりました。
スリランカ産のジルコンは、成分に放射性のトリウムとウラニウムが入ることで、結晶格子が崩壊している「メタミクト(ロー・タイプ)」構造のものが多いです。その為、色も緑、茶色、赤味やオレンジがかった茶色のものが多く、それらを加熱処理すると、結晶格子が再生され、「ハイ・タイプ」になります(自然界にもハイ・タイプのものが存在します)。色は、青、オレンジ、無色などで、カンボジアなどでは茶色のジルコンを熱処理し、すばらしい青色に変化させています。この青色をさらに酸化状態で熱を加えると、輝かしい黄金色に変わります。ちなみにジルコンの語源はペルシャ語で「金色」です。
スリランカ産のジルコンは熱処理をしても鮮やかな青に変わるものはないと思われますが、黄色ぽい茶色のジルコンを加熱することで、キャッツアイのような一条の光(シャトヤンシー効果)を作りだすことができます。これは、「ジルコンキャッツアイ」と呼ばれていますが、あまり宝飾向きではないでしょう。
日本ではあまり人気のない宝石ですが、強い輝きと、硬度さえ理解しておけば、宝飾として充分魅力的だと思います。歴史的にも古い宝石なので、「ジルコンを身につけると、知恵、名誉、富をもたらす」と言われ、信じられていた時代もあったそうです。真意のほどは知りませんが、もう少し価値が見直されてもいいのでは?と私が勝手に思っている宝石です。
片山新子、FGA (英国宝石学協会、宝石鑑別資格)
個人の楽天ブログ「スリランカ宝石留学物語」
個人WEB「Ragems」