ジュエリーブログ,ニュース / ジェムランド

2009/2/3 火曜日

スリランカ宝石便り〜その18〜

Filed under: スリランカからの宝石便り — shinko @ 6:56:39

スリランカの商業都市、コロンボから南に車で2時間ほど行ったところにベルワラという街があります。ここはスリランカ国内に限らず近隣諸国、さらにはアフリカから産出された宝石が持ち込まれ、活発に商いがされています。スリランカで有名な宝石産地、ラトゥナプラでは原石の売買が中心ですが、ここは研摩されたものが、ロットで売られます。観光客相手というよりは、国内外の宝石ディーラーが買い付けにくる場所です。

スリランカ、ベルワラマーケットは毎週水曜、土曜、日曜日の午前中に開かれ、スリランカのディーラーたちは白い色の服(サロン)を着ます。これは、木綿のシンプルな素材で値段も手頃です。金のあるものもないものも等しく商いをするという目的で、相手の服装でレベルを決めないという理由からです。マーケットがスタートすると、路上は白い色を着た男性で埋め尽くされます。私のような外国人は別として、ビジネスの中心は男性です。

ベルワラの一角、チャイナ・フォートという場所に100近いオフィスが並んだ通りがあり、そのオフィスの広さは畳3〜4.5畳ほどの広さ(狭さ?)です。その狭いオフィスに座ると、次から次へ宝石ディーラーが入ってきて、宝石をどんどんどんどん見せてくれます。

自分がどういうものを探しているのか?ということを伝えれば、その種類の宝石が並べられます。明確にしなければ、日本人ということで、高級なサファイアやキャッツアイが並べられます。

ベルワラ売る側は、鉱山主、鉱山からの宝石を預かってきたディーラー、海外からの宝石を扱うディーラー、そしてベルワラの商人で過去に買い付けたものを売るディーラーと様々です。服装で相手を見てはいけないのですが、その扱っている宝石のレベルで、そのディーラーの力がわかります。通常宝石は白い紙に包まれているのですが、その紙の傷み具合で、どのくらいこの宝石を持っているか、つまり売れてない状況かを読み取り、それを値段交渉に役立てていきます。相手に値段を聞けば、「あり得ないような値段」を言われるので、こちらの希望価格の下あたりを初めに伝えて、そこから交渉を始めていった方がいいでしょう。もちろん予め相場を知っていないといけませんが。この方法が正しいかどうかはわかりませんが、私のような一見弱そうに見える(?)女性の場合は、必ず値段をかなり高めに言われてしまいます。これも買い付けの回数を増やし、経験を積んで行くしかないと思います。

もし旅行でスリランカに来て、宝石を買う場合は、きちんとした宝石店で購入されることをお進めします。マーケットでは、観光客ということで高く買わされるか、ガラスをつかまされてしまう場合もあります。宝石は人の手を渡ってきているので、売る側も悪気がなくてもガラスが混じったロットを扱ってしまう場合があるからです。

片山新子(かたやま しんこ)、FGA
個人の楽天ブログ「スリランカ宝石留学物語」http://plaza.rakuten.co.jp/gemgasuki

2008/12/2 火曜日

スリランカ宝石便り〜その17〜

Filed under: スリランカからの宝石便り — shinko @ 10:40:03

081202.jpgスリランカの宝石として筆頭に上がるブルーサファイア。その歴史は古く、セイロンサファイアとして、西洋諸国をはじめ多くの国のロイヤルファミリーに愛されてきました。太古の時代から採掘されているサファイア、飛行機もなかった時代に数々の宝石商人の手を経て遠い西洋諸国にどのように運ばれていったのだろうかと考えるだけで、また違った角度から宝石を楽しむことができます。

ロンドンでお薦めの場所のひとつにヴィクトリア&アルーバート博物館(1852年に開館)があります。サウスケンジントンに位置する世界的にも価値あるもので、ヴィクトリア時代のコレクションをはじめ、絵画、彫刻、写真、ガラス工芸品、金属製品、陶磁器、宝石・貴金属、建築関連、アジア美術、衣装、アンティーク家具、中世から近代の武器などが展示されており、大変見ごたえのある美術館です。

ジュエリー・ギャラリーでは、500年にわたる歴史的で価値の高い宝飾品が並べられており、その数は約4千点にのぼります。細工されたデザインは美しく、ひとつひとつの繊細な技にため息が出てくると共に、このジュエリーを身に着けた王族や貴族の華やかな世界にタイムスリップしたような気分になります。

興味深い点は、その宝石の大きさや色の良さ。内包物など天然の証も肉眼で確認できるほどですが、処理技術もなかった時代、本当に色や輝きの良いものは限られていたと思います。地位ある方々しか持つことのできなかった宝石。宝石とは本来そういうものであるのかもしれない・・・とコレクションを見ながら感じました。

目に止まったものにサファイアをインタグリオしたペンダントがあります。1580年のイギリスのもので、全体で5センチ程度になる存在感あるものです。産地は不明ですが、おそらくスリランカから中東を経由してヨーロッパに渡ったサファイアかもしれません。しばらくそれを見つめながら、スリランカのラトゥナプラの南国の暑さや、懸命に働く鉱夫の姿などが浮かんできました。

写真・The Knyvett Seal (1580年)

片山新子(かたやま しんこ) FGA
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(↑英国宝石学協会・学会に参加した個人的な出来事をブログに書いています。)
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2008/11/11 火曜日

スリランカ宝石便り〜その16〜英国宝石学協会100周年に出席して

Filed under: スリランカからの宝石便り — shinko @ 5:20:40

英国宝石学協会の宝石学会が10月26日、27日ロンドンのヒルトンホテル(ケンジントン)で開催されました。今年は英国宝石学会設立100周年ということで、学会も二日間にわたり、13名のスピーカによるレクチャーがありました。

一日目は「宝石学の基盤」というテーマで、宝石学の歴史、インクルージョンの発見に関する歴史、ジュエリーの歴史などを科学的根拠だけではなく、その時代の人々に支持されていた考え方、当時の流行などを交えながら話が進みました。

中でも、宝石学の生みの親と呼ばれ、インクルージョンの世界を広めたスイス、ギュベリン宝石ラボラトリー(GGL)の(故)Mr. E.J.Gubelinと共に「Photoatlas」を出版されたGIAカリフォルニアのMr.J.I.Koivulaの話は大変興味深かったです。彼は46年間に渡りインクルージョンの写真を撮り続け、800を超える記事を発表されており、今回はその研究の一部でも話が直接伺えたのは、とても良い刺激になりました。鑑別にインクルージョンが大変重要であるということは承知していますが、やはり数を多く見て、自分の目を確かなものにしていかなければならないと思いました。
またあらためて、宝石の中に広がる潜在的な世界は美しいと思いました。

17世紀のスウェーデン王室のジュエリーの話は大変華やかな世界であり、当時の王室の権威と宝石が王室にとってどれほど重要なものであったかを伺い知ることができます。

sweden-crowm-jewel.jpg18世紀以降は宝石の産出量が増えたことで、世界のジュエリーの概念が変わってきます。ジュエリーが大量に作られ、王室だけではなく一般の人(と言っても上層階級を中心とした)も宝石を身につける機会が増えました。

アメリカの宝石として、ティファニー社のクンツ博士(Dr.G.F.Kunz)の人生や宝石学に対する姿勢について、またティファニー社が如何に市場を開拓してヨーロッパとは違ったアメリカならではのスタイリッシュなジュエリーを生み出したかといった話も興味深かったです。

二日目は「現在の宝石学」というテーマで、鑑別を如何に確かでスムーズに行うかといった技術的な話がされました。「磨いて輝くのは宝石だけではなく、自分の鑑別技術も」といった話から始まり、既存の屈折計を如何に活用していくか、ポータブルな鑑別器具を如何に使いこなして行くか(モバイル化していく近未来の話も含め)と興味はつきません。

また最近市場に増えてきた緑、黄緑、紫がかった青のクオーツについての最新報告も行われました。

英国宝石学会は毎年10月下旬にロンドンで開かれます。英語ということで、私も全てを把握するのは正直申して・・・大変です。しかし、同じく宝石学を学んだ世界各地の仲間に会える機会であり、先輩方の話を伺うことができる点は大変勉強になりました。

写真上:学会の会場。
写真下:スゥエーデン王室ジュエリーの話をされたMs.Sandra M.Brauns (Bukowski Auction House, Stockholm)と一緒に。

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2008/10/27 月曜日

スリランカ宝石便り〜その16〜英国宝石学協会100周年

Filed under: スリランカからの宝石便り — shinko @ 14:03:14

今年は、英国宝石学協会が設立されて100周年という特別な年にあたります。

世界の中で最も歴史ある「宝石学協会」ですが、太古の時代から採掘されてきた宝石の歴史から見ると、「宝石学の歴史ってそんなに浅いものだったの?」と感じてしまいます。

化学組成や内包物から化学的に宝石を分別していく手法が確立されたことで、同じ色をした「ルビースピネル」、「ガーネットとピンクトルマリン」などが区別できるようになりました。今日では多くの宝石が合成され、オイルや加熱、照射といった処理が施されています、「宝石学」は天然とニセモノの区別だけでなく、その天然の宝石が「どのような処理がされているのか」といったことを鑑別する上でも欠かせないものです。処理する側としても宝石の性質を理解して、無理のない恒久的な処理を行う上でも宝石学的な知識は必要でしょう。高級な宝石を持つのですから、情報がしっかり開示され納得のいく買い物ができるようになればと願います。

私が「宝石学」を学ぶきっかけとなったのは、宝石の内部に広がる内包物の美しさに魅かれたからです。ちょうど主人がスリランカに赴任していたということもあり、コロンボで英国宝石学協会の鑑別資格であるFGA(Fellow of Gemmology Association)の勉強をしました。この資格は日本やカナダ、オーストラリアを始め22カ国の提携センターで取得することができます。スリランカの場合、コロンボとキャンディのブリティシュ・カウンシルで年2回(1月と6月)に試験を受けることができます。もちろん英語のみですが・・・。

1.ファンデーション・コース(半年)

それに合格した後、

2.ディプロマ・コース(半年)

全部で1年のコースです。授業は週1回から2回、少人数です。私の時には、ファンデーションは私のみで、ディプロマは二人でした。お陰で、私のペースで質問することができました。(←だから合格できたのでしょう)ディプロマを取得すると「FGA」というタイトルを使うことが許されます。スリランカの場合、このタイトルがあれば鑑別書を発行することができます。(お店で出されるのは、ジュエリーの保証書であり鑑別書とは違います。)スリランカでは宝石学を大学で学ぶ人は多いのですが、FGAの資格取得には費用がかかりすぎる(教材、試験代がこちらの物価から考えると非常に高い)ので、躊躇される方が多いです。(大学で学んだ場合はファンデーションコースが免除されるが、ディプロマはコースと試験を取らなければならない)

日本では宝石学の資格と言えば、GIA(米国)のGGを取得される方が多いと思います。

GIAの詳しいことはわかりませんが、FGAはビジネスとして宝石を扱うことより学問としての宝石といった色合いが強く、試験の内容も記述式です。勉強していて、途中何度も、「どうして、こんなに掘り下げた質問、癖のある質問が多いのか?」と腹ただしく思ったこともあります。会員のメーリングリストも鉱物的な質問や議論が多いように見受けられます。

さて、英国宝石学協会の宝石学会が10月26日、27日ロンドンのヒルトンホテル(ケンジントン)で開催されます。100周年に伴い、例年にないスピーカーの多さで、充実したものになるでしょう。次回はその会場の様子などをお伝えします。

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2008/10/19 日曜日

宝飾業界に於けるITの活用について23-インターネット利用状況アップデート-

Filed under: ジュエリーコラム — 福本 @ 7:41:51

総務省が発表した平成20年版情報通信白書を取り上げ、宝飾関連事業者に役立つと思われる情報をまとめた。今後のIT戦略のお役に立てば幸いである。

■ユビキタスネット

 平成20年版情報通信白書では、その約半分の記述を「活力あるユビキタスネットの実現」に割いている。ユビキタスネットとは、いつでも・どこでも・誰でも利用可能なネットワークを指す。具体的にはオンラインショッピング、テレワーク、遠隔医療の一層の普及とそれによる人・物の移動の減少や、ペーパーレス化を通じた省エネ化、つまり地球環境への貢献、あるいは様々なものに電子タグを取り付け、またタグを読みとるセンサーを普及されることでトレーサビリティを高め、物流等の効率化を計るといったことが含まれる。

 例えばK14WGのピアスに電子タグを取り付けたとする。盗難対策という意味の他にも、金属アレルギーの人がその旨を記録したタグを所持していれば、当該ピアスを手に取った時に音を鳴らして注意を促すといった使い方も考えられる。

 携帯電話で読み込み可能な二次元バーコードを野菜に取り付け、消費者に生産者情報を提供するスーパーがある。ユビキタスネットの考え方を電子タグに代わって二次元バーコードで実現している訳だが、宝飾品に於いても同様にデザイナー、制作者などの情報を提供しても面白いだろう。
■インターネット利用者数

インターネット利用者数と人口普及率の推移

 平成19年末のインターネット利用者数は8,811万人(前年対比0.7%増)だった。ここ2年間は微増にとどまっている。インターネットの人口普及率が69%に達した今、この傾向は今後も大きく変わらないことが予想される。

 個人がインターネットを利用する際に使用する端末は携帯電話などの移動端末での利用者が平成18年末から201万人増加して7,287万人だったが、パソコンからの利用者は242万人減少して7,813万人だった。

■携帯のみでネット接続する利用者が急増

 着目すべき点は携帯端末でネットに接続するユーザが増加し、パソコン・ユーザが減少している事だ。インターネットを携帯端末のみで利用するユーザ者は304万人増加して992万人で、前年対比でなんと44.2%増加している。一方、パソコンでのみ利用するユーザは158万人減少(同9.7%減)して1,469万人だった。

インターネット接続時の利用端末

 2010年に実用化が見込まれる光ファイバー並みの通信速度が実現される第4世代携帯電話の普及がはじまれば、携帯端末でのみインターネットを利用するユーザは益々増加することが見込まれる。

 携帯ユーザに対するネット上での情報提供は、今後益々重要になるだろう。

■ブロードバンドの利用状況

 この連載をはじめた当初、ブロードバンドという言葉は浸透しておらず注釈で説明をする必要を感じたが、8年を経た今や一般家庭におけるブロードバンド普及率はインターネットユーザの約80%に上る。

 ブロードバンド普及率は、規模の大きな都市の方が高い状況は当初から変化が見られないものの、近年は町・村での伸び率が大きくなっている。通信事業者のインフラ整備が都市部でほぼ整い、町村部に手が回り始めた状況がうかがえる。

 作成担当者は従来、ウェブページに使用する画像ファイルのサイズをいかに小さくするかに心を砕いていたと思うが、今やその苦労からは開放されつつあるのは喜ばしい。

■AIDMA理論に代わる新たな消費行動プロセス

 マーケティングを学んだ方の多くは、消費者が商品購入に至るまでの心理状態の変化を述べたAIDMA理論をご存知だろう。即ち以下のプロセスである。

・Attention(商品を認知)
   ↓
・Interest(興味を持つ)
   ↓
・Desire(欲しいと思う)
   ↓
・Memory(商品やブランドを覚える)
   ↓
・Action(購入する)

購入前に複数の表品や販売店をインターネットを用いて常に比較する人の割合 インターネットが存在しない1920年代に提唱されたこのプロセスは、消費者が限られた情報にした触れることができないことを前提としている。しかし現在は大量の情報をいつでも入手することができる。この変化によって消費者の購買プロセスもAIDMA理論の通りではなく、商品を“認知”し“興味”をもった後には複数の類似商品についての情報を集めて購入前に品質、価格、販売店を比較する「選択肢評価」行うようになったと考えられている(右図)。

■購買行動の6割に影響する選択肢評価。立地条件の悪い小売店はネット上での情報発信が特に肝要

 選択肢評価は複数店舗を訪れる事でも行われ、実際衣料・アクセサリーに於いてはその割合が5割以上と最も高い。しかし、ショッピング・サイトやブログなどの口コミサイト、メールマガジンなどのインターネットを利用しての選択肢評価も合わせて5割を越えているる点も見逃せない(下図)。それは、ネット上での情報発信がない小売店は8千万人を超えるネットユーザの半数が実施する選択肢評価の対象にすら入らないとも読めるからだ。

過去1年以内に事前に選択肢評価を行った方法(複数回答)

 商品や販売店を比較した結果は実際の購買に大きく影響する(下図)。衣料・アクセサリーでは約56%が購入の決め手になったとしている。

比較した情報の購入決定への役立ち度

 それでは、衣料・アクセサリーは実際にはどこで購入されているのか。およそ76%が店頭と答えている(ネット通販は約16%)(下図)。

過去1年間で商品購入した際に利用した購入方法

 これらの数値から、商品や販売店を比較する情報は実店舗の訪問やネット上で集め、購入は実店舗で行う消費者が多いという姿が浮かぶ。情報収集段階での実店舗訪問は複数店舗が軒を連ねる百貨店やショッピング・モールに集中すると考えられる為、立地条件の悪い小売店の場合には、ネット上での情報発信が一層重要だといえよう。

■ネット戦略は“ウチ”にも関係ある

 このようなことお読みいただいた宝飾店経営者の中には、次のように考える方も居られるかもしれない。

「ジュエリーは他の物品とは違う。高額な宝飾品を実際に見ないで買う顧客はいないから、ネット戦略といってもウチには関係ない」
「カラード ストーンは1石1石ユニークだから、同じ色石でも他の石とは比較できない以上、インターネットで消費者が比較する対象とはならない」

消費者向け電子商取引の市場規模しかし、弊社がお手伝いしているネット ショップの中には、異業種から参入をして1点数十万円という宝石類をコンスタントに売っている会社がある。ネット上で商品を認知し成約は来社の上ということも多いそうだが、この場合もネットあればこその成約である。そのような会社は他にもあるだろう。このようなネット ショップで宝飾品が売れた分、ジュエリー市場は拡大しているのだろうか?おそらくそうではあるまい。ネット ショップで買った分、百貨店や専門店で買わなくなっているのではないだろうか!? そして消費者向け電子商取引の市場規模が拡大している(右図)現在、この傾向はさらに顕著になる事が予想される。売れない売れないと訴えている小売店も多いが、このような現実を前に、ネット戦略などウチには関係ないですむものではあるまい。

出典
平成20年版通信通信白書査(総務省
平成19年通信利用動向調査(総務省)
平成18年度電子商取引に関する市場調査(総務省)
ユビキタスネット社会における情報接触及び消費行動に関する調査研究

有限会社フクモト・ロジスティック・システム
福本 修

本稿は、ジェモロジスツ ニュースGIA JAPAN発行)vol.62に寄稿した弊社原稿をGIA JAPANの許可の元、転載した。

2008/10/7 火曜日

スリランカ宝石便り〜その15〜 スリランカ国際、宝石・宝飾展覧会

Filed under: スリランカからの宝石便り — ジェムランドeditor @ 14:46:27

スリランカ国際、宝石・宝飾展覧会19月6日から9日までスリランカ、コロンボで「第18回スリランカ国際、宝石・宝飾展覧会」(Facets Sri Lanka 2008)が開催されました(写真右がオープニングセレモニーの様子)。スリランカの宝石業界最大の展示会であるこのショーは毎年9月上旬に開催されます。「インターナショナル」とされていますが、治安の悪化で、海外から出席される宝石関係の方々が少なく残念です。それでも今年は中国から10名ほどの視察団が訪れ、またミャンマーからも7業者がミャンマー産の美しい宝石や宝飾品を販売しておりました。中国は中産階級人口の増加で、宝石ニーズも高い国です。スリランカとしても中国へのビジネスの展開、また豊富な宝石が産出されるアフリカ、マダガスカルやタンザニアとの協力を視野に入れているようです。開会式で投資開発大臣(Minister of Enterprice Development&Investment Promotions)のスピーチでもその点を強調されており、「まずは自分たちが豊かになり、国全体が豊かになることで貧困層を撲滅させよう」とおっしゃっていました。あらためて、「あぁ、この国は発展途上国だったのだな〜」と感じました。こちらで生活していると、想像を超える金持ちや物乞いのいる状態をあたり前のように感じてしまいます。大臣のおっしゃる通り、この国から産出された宝石で、一部の人間だけでなく、富が全体に行渡る日(福祉の充実、雇用拡大、正当な賃金など)がくればいいと思いました。(←その前に今の物価の高騰を何とかしてほしいと一般市民は思っていると思いますが、ちょっと話が宝石からずれてしまいましたね。)

スリランカ国際、宝石・宝飾展覧会2今年の「宝石展覧会」は111のブースが参加しています(写真左は会場内の様子。写真右下は出展業者)。コロンボ以外の地方の宝石業者の参加も多いため、見る側としてはいろいろなレベルの宝石や値段を一同に比べることが出来ます。また店ごとに特徴があり、10カラットを超えるサファイアやキャッツアイといった高級宝石を扱っている店や、クオーツやトパーズなど比較的値段が手頃な宝石、希少石を扱う店、ゴールドジュエリー、シルバージュエリーなど年々規模は大きくなっているようです。またこの期間中しか一般販売はしないとされている、ダイアモンドの販売もあります。 

スリランカ国際、宝石・宝飾展覧会3

 私が興味深かったところは、コランダム(おもにブルーサファイア)の加熱技術を説明しているブースです。加熱業者がその技術を説明する場所があるのは何ともスリランカらしいと思いました。

スリランカ国際、宝石・宝飾展覧会4

スリランカ国際、宝石・宝飾展覧会5

スリランカ国際、宝石・宝飾展覧会6

写真下から3番目:.主にルースの状態で販売されている様子。

写真下から2番目:ジュエリーを販売するコーナーの様子

写真一番下:加熱処理される前とされた後のサファイア

片山新子(かたやま しんこ) FGA
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2008/7/23 水曜日

スリランカからの宝石便り 〜その14〜 スリランカの非加熱サファイア

前回はスリランカの宝石産地について書きましたが、主にサファイアなどが採掘されるのは漂砂鉱床です。長い年月にわたり風雨や洪水などにもまれた結果、サファイアの結晶は三方晶系の形を失い、まるで小石のような状態で発見されます。同じ場所で採掘されるスピネルの結晶も等軸晶系ではなく、つるっとした感じの丸みのある小石のような状態です。

市場に出回るサファイアの多くは、色を改善する為に「熱処理」が行われています。この処理についてはまた改めて書いていきたいと思いますが、研摩以外に人的な処理が何もされてないものは「非加熱サファイア」と呼ばれ、その希少性からも加熱されたものと比べ値段が高くなります。特にカラット(重さ、サイズ)の大きいものはさらに希少です。

私は原石で1〜3カラットほどのサファイアを買付け、それを研摩するのですが、もとの形が平べったい小石のような形の為、きちんとしたプロポーションのカットを望めば、研摩後は原石の35〜50パーセントになってしまいます。主な色は青、ピンク、黄色で、中には紫、パパラチアか?と思われるようなオレンジがかったピンク、無色のものもあります。原石のままでも美しいのですが、そのままではスリランカ国外持ち出しが禁止されています。形を変えず、磨いただけのものはジュエリーに加工したものであれば国外に出すことが可能です。何とか原石に近い形で、その魅力を伝えることができないか?そんなジュエリー政策も考えています。

◇ ご案内

現在、日本へ一時帰国(8月20日頃まで)しております。
スリランカの非加熱サファイアや半貴石のルースを取り揃えております。
興味ある方はメールを下さい。→ shinko@globalreach.co.jp
(宝石やスリランカの状況など、どうぞお気軽にお問い合わせください。)
また、スリランカの宝石について、宝石学的視点や宝石の産地の話を交え親しみやすくお話します。アートセラピストの彩香さんの(東京・神楽坂)イベントで、私が宝石の話しをさせて頂くことになりました。ぜひ、ご興味がありましたらご参加ください!!
7月26日・午後2時より5時まで
イベント詳細

片山新子(かたやま しんこ) FGA
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2008/7/2 水曜日

スリランカからの宝石便り 〜その13〜 スリランカの宝石産地

Filed under: スリランカからの宝石便り — shinko @ 4:06:53

コランダムスリランカの宝石の歴史は、紀元前250年頃までさかのぼることができると云われています。その太古の時代から今日に至るまで、これまで紹介したような様々な宝石が産出されています。もういい加減、産出量も減っただろうと推測しても、現地の地質学者は、まだ宝石層のある地質の数パーセントしか採掘されていないと言います。この小さな島国にまだまだ可能性があるのか?と頼もしく思ったりもしますが・・・。

さて、スリランカの地質は北西地域以外、主にプレカンブリア時代の岩石で構成されています。その時代のスリランカは、アフリカのマダガスカルと陸でつながっていたと云われていて、現在産出される宝石の種類の類似性を考えても大変興味深く、まさに「宝石」がその歴史の「生き証人」になっています。

宝石が産出される主な地域は、島の中心から下のあたり(Highland Southwestern Complex)に集中しており、「宝石の街」という意味を持つ「ラトゥナプラ」がもっとも多くの種類を産出しています。この辺りは漂砂鉱床で、長い年月にわたり風雨や洪水などにもまれ、その結晶は形を失い、まるで小石のような状態です。それらが、川などに流され、また地中に埋もれ、比重が大きい為一箇所に集まって宝石鉱床となります。地中15メートルから30メートルくらいを井戸のように掘る(Pits)とその鉱床にたどり着きます。また川に流れ込んだ宝石は、川底をさらう感じで採掘します。    

 

機械を導入して大規模な採掘を行う業者もいますが、昔ながらの方法(穴を掘っていき、水をくみ出す)を人力でしている場所も多いです。採掘現場は、穏やかな田園風景が広がり、大変のんびりとした感じが私は好きです。今は爆弾テロなどで、スリランカ全体の治安がよくないのですが、将来、平和になったらぜひスリランカの採掘現場をいらして下さい。

 

 

(写真・採掘されたサファイアは結晶の形はなくなり、小石のよう。色が美しい)

 

 

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2008/6/16 月曜日

スリランカからの宝石便り 〜その12〜 水晶(クオーツ)

クオーツクオーツの結晶の形は先端が尖がった感じの六角柱状になっています。化学組成は二酸化珪素。割れると貝殻状の断口をしています(まっすぐ割れない)。無色透明のものを「水晶(ロック・クリスタル)」と呼び、スリランカでは現地のシンハラ語で「Palingu」と呼び、仏教徒は記念碑などの上に置き、とても神聖に扱っています。

茶色や黒っぽい色の「スモーキー・クオーツ(ブラウン・クオーツ)」は地中で天然の放射能を浴びたと考えられています。無色の水晶に照射し色を茶色にする技術もあります。スリランカではスモーキー・クオーツは大きなものが産出されますが、あまり宝石レベルの美しいものは少ないのが残念です。

クオーツの中でも有名なアメジストは赤紫の美しいものから薄い紫のものがスリランカの広範囲な地域で産出されます。中には部分的に紫と黄色のシトリンが同じ石に現れるものもあり、「アメトリン」と呼ばれています。シトリンは黄色がかったクオーツを指しますが、残念ながらスリランカで宝石レベルのシトリンは産出されにくいです。コロンボの店頭に並ぶ多くのシトリンはアメジストを加熱してシトリンにしたものです。これらクオーツのトリートメント(処理)はスリランカでは一般的にされていません。おそらく多くのアメジストやシトリンは海外から輸入されたものでしょう。

ローズクオーツピンクのかわいらしい色あいの「ローズ・クオーツ」は世界的にも美しい結晶で見つかることは大変稀です。少しもやのかかったようなピンクで、これは、内包物の微細なデュモルチエ石結晶によるという説や微細なルチルによるものという説があります。このルチルが、正しく方向を持って並ぶと、石の上に3本の光の帯が現れます。このスター・ローズクオーツは、スターサファイアと違い、ライトを宝石の真上から当てるのではなく、宝石の後ろ(下)から光を通過させることでスターを見ることができます。また、一条の光の帯が見える「クオーツ・キャッツアイ」があります。この場合は光を上から当てて見ます。

私自身、クオーツを買う時に合成か天然か鑑別に悩む時があります。はっきりと内包物を確認できればいいのですが、クリアーなものの場合その判断は大変に難しいです。アメジストの特徴的な内包物として、虎縞模様のものや色むらがあります。ただ、天然ものも値段が安いので、かなり大きめのサイズを購入することができます。その大きさから大変インパクトのあるジュエリーとなるでしょう。

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2008/5/31 土曜日

スリランカからの宝石便り 〜その11〜 ムーンストーン

ムーンストーン

宝石学的に言えば、ムーンストーンは長石(英語名Feldspar)に分類されます。長石の化学組成はカリウムとアルミニウム珪酸塩で地球上の造岩鉱物の中でも一般的です。この長石の中でもスリランカで豊富に産出されるのはムーンストーンです。特に青い光が表面に浮かぶシラーは、まるで、本当に月から来た宝石なのではないかと不思議に感じます。

この青いシラーは学術的にはアドゥラレセンス(Adularescence)と呼ばれ、その光の仕組みはレイリー散乱(空がどうして私たちには青く見えるのか?)と同じです。簡単に言えば、ムーンストーンはふたつのタイプの長石がサンドイッチのように互いに層をなしており、そこに入った光の干渉により青く見えまるのです。

http://plaza.rakuten.co.jp/gemgasuki/diary/200611230000/
(レイリー散乱とムーンストーンについて書いた個人ブログ)

ブルー・ムーンストーンは通常の乳白色のものと比べて値段がかなり高いです。スリランカでは産出量が減ってきていると言われています。乳白色のものの中にはキャッツアイのように白い光が目のように浮かぶものもありますがブルー・ムーンストーンに比べればかなり安いです。

残念ながら硬度が6と真珠と同じ低さですので、ジュエリーとしてはペンダントトップなどにするのが無難でしょう。普通はカボションにカットされますが、細長く大きさもあるカットが多いので、存在感のあるジュエリーになると思われます。

レインボー・ムーンストーンと呼ばれる赤や黄色、青などが浮かび上がるものがありますが、正式には透明のラブラドライトのことで、残念ながらスリランカでは産出されません。

片山新子(かたやま しんこ) FGA
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