10月7日、香港パシフィック プレースでサザビーズのジュエリー オークション[Magnificent Jewels & Jadeite]が開催された。
興味を惹いた落札案件としては、次のようなものがあった。
ダイアモンド リング5億9千万円
34.07キャラットのダイアモンドを用いたプラチナ製のダイアモンドの指輪。落札価格は約5億9千万円。GIAのダイアモンド グレーディング レポートが添付されており、カラーはD、クラリティはインターナリーフローレスと評価されていた。カットはクッション シェープ。合計約2キャラットのダイアモンドの脇石が使用されており、カラーはEからF、クラリティはVVSからVSと見積もられた。JACOB & CO.(ジェイコブ アンド カンパニー)の刻印がある。
レッドとブルー スピネルの指輪71万円
驚くような落札価格では無いものの、2色のスピネルがツインになっている点がユニークな指輪がおよそ71万円で落札された(写真右上)。2石合計で4.65キャラットでK18YG(18金イエローゴールド)の地金で留められており、複数のダイアモンド メレーが腕に彫留めされている。Agapoffの刻印があり、GRSの処理の痕跡なしのレポートが添付されている。
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米国のブッシュ大統領がミャンマー制裁強化法案に署名した。これにより、ルビーや翡翠といった同国産のアメリカへの輸入が全面的に禁止される他、軍事政権の資金源となってい宝石を取り扱う会社や、ミャンマー鉱業省が所有する採掘業者のアメリカ国内の資産が凍結されることとなった。
ミャンマーからの宝石の直接輸入は従来から禁止されていたが、この法案の成立により第三国経由の米国への輸入も禁止されることとなる。既に米財務省などは7月29日より制裁を開始している。
ミャンマーは高品質なヒスイを商業ベースで産する世界で唯一の国であり、また最高品質のルビーを産するモゴク(モゴック)地区、及びコマーシャル・クオリティのルビーを大量に産するモンスー地区を擁する。
※写真はミャンマー・モンスーで産出され、ペア・シェープにファセット加工されたルビー
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7月にこのブログで報告したコーティング処理が施されたタンザナイトについて、AGTジェムラボラトリーが「コーティング タンザナイトの顕微鏡観察鑑別」として速報した。
鮮明な写真付きなので見やすい。顕微鏡写真だが、ルーペでも十分確認できるコーティング処理の特徴が記されている。
AGTジェムラボラトリー: コーティング タンザナイトの顕微鏡観察鑑別
GIAの発表した業界分析によると、原油高による採掘コストの上昇によって採算割れとなり、生産を停止する色石鉱山が増加している。
スリランカ、ミャンマー、ブラジルなどに操業を停止した鉱山が目立ち、色石の集散地として有力なタイのチャンタブリには持ち込まれるルビー、サファイアの減少が著しいという。
特にミャンマーではサイクロンの影響も重なり、同国より持ち出される高品質のルビー、サファイアの量が少なく、値段が高い。
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2008年5月よりコーティング処理タンザナイトが増加している事に対応し、大手鑑別機関のひとつIGI(International Gemological Institute:インターナショナルジェモロジカル インスティチュート )が当該処理タンザナイトの簡易鑑別サービスを開始すると発表した。
サービス料金は10石単位で50ドル(1石5ドル)。10石未満の場合でも50ドル。石の大きさは問わない。
>> 関連: IGIトロントにラボを開設
>> 関連: IGI、ニューヨークのDDC(ダイアモンド ディーラーズ クラブ)に事務所を開設
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コーティングを施したタンザナイトが増加基調にある。
このコーティング処理は、色の薄いファセット加工済みタンザナイトをコバルト色因の被膜で覆うというもの。
この処理によるタンザナイトもコーティング処理石に見られる一般的な特徴を備えているから、タンザナイト買い付けの際、コーティングの可能性さえ頭に入っていれば識別を誤ることはないだろう。
コーティング処理石に見られる一般的な特徴とは、主としてパビリオン上のファセット面から観察されるイリデッセンス(虹色 / コーティング被膜と石の隙間に起因)や、ファセット稜線及びキューレット付近の被膜の剥がれである。剥がれた部分の色は薄く見える。
被膜の剥がれを検査する最も良い方法は、検査石を白色の拡散板(あるいは通常のコピー用紙のような白く薄い紙)の上に置き、拡散板の下から強い照明を当てた状態での観察である。石を浸漬した状態で拡大すれば最適の検査環境となるが、浸漬せず、裸眼で判断できる事も多いはずだ。
その他このコーティング石固有の識別特徴としては、弱い多色性と青みが強い不自然な色を挙げることができる。未処理で色の深いタンザナイトの場合、その色は強い多色性に起因しブルーとパープルカラーが混在しており、石を観察する角度を変えるとブルーとパープルの出現場所と比率が変化するものだが、コーテッド タンザナイトの場合にはそのような変化が見られない。これは処理に用いられた元々のタンザナイトの地色が弱い(すなわち多色性が強く認識できない)ことに加え、ブルーに発色する被膜自体が多色性を持たない為である。
>> IGI、コーテッド タンザナイトの簡易鑑別サービス開始
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米大手テレビ通販会社ジュエリー テレビジョンが、宝石販売に関する不当広告で提訴された。訴えたのはカリフォルニア在住の女性で、請求した損害賠償額はおよそ5億4千万円。
この女性によると、ジュエリー テレビジョンが稀少な赤色または緑色のアンデシン ラブラドライトとの広告に基づき購入をした宝石が、実際には化学的に処理された無色または黄色のフェルドスパーであったという。
処理を意図的に隠して販売をしたとは思わないが販売者責任が問われる時代である。宝石の販売者は、プロフェッショナルとして処理を知らなかったで済まされるものではない。自らの知識を磨き、供給者の情報だけに頼ることなく適切な情報を開示して販売することが肝要だ。
公正取引委員会には消費者を保護する観点から宝石・ジュエリーの広告に関する規制を強化してもらいたい。 規制緩和の潮流に逆行するとの考えもあるかもしれないが素人も簡単にインターネットで販売が可能な時代。その広告には目を覆いたくなる不当表記を目にすることもあり、歯止めの必要性を感じている。
販売者の立場からすると規制強化はうっかり知らずに処理石を売ってしまったらどうするのだという不安を持つかも知れない。しかし、自らの知識を蓄え、必要に応じて宝石鑑別機関を利用して、適切な表記で消費者が安心して宝石・ジュエリーを購入できる環境を整えればマーケットはより大きなものとなり、ビジネスに良い影響を与えるものと信じる。
参考までに記すと、FTC(米連邦取引委員会)ではジュエリー、貴金属業界向けに広告の文言を細かく定めたガイドラインを設けている。
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クオーツの結晶の形は先端が尖がった感じの六角柱状になっています。化学組成は二酸化珪素。割れると貝殻状の断口をしています(まっすぐ割れない)。無色透明のものを「水晶(ロック・クリスタル)」と呼び、スリランカでは現地のシンハラ語で「Palingu」と呼び、仏教徒は記念碑などの上に置き、とても神聖に扱っています。
茶色や黒っぽい色の「スモーキー・クオーツ(ブラウン・クオーツ)」は地中で天然の放射能を浴びたと考えられています。無色の水晶に照射し色を茶色にする技術もあります。スリランカではスモーキー・クオーツは大きなものが産出されますが、あまり宝石レベルの美しいものは少ないのが残念です。
クオーツの中でも有名なアメジストは赤紫の美しいものから薄い紫のものがスリランカの広範囲な地域で産出されます。中には部分的に紫と黄色のシトリンが同じ石に現れるものもあり、「アメトリン」と呼ばれています。シトリンは黄色がかったクオーツを指しますが、残念ながらスリランカで宝石レベルのシトリンは産出されにくいです。コロンボの店頭に並ぶ多くのシトリンはアメジストを加熱してシトリンにしたものです。これらクオーツのトリートメント(処理)はスリランカでは一般的にされていません。おそらく多くのアメジストやシトリンは海外から輸入されたものでしょう。
ピンクのかわいらしい色あいの「ローズ・クオーツ」は世界的にも美しい結晶で見つかることは大変稀です。少しもやのかかったようなピンクで、これは、内包物の微細なデュモルチエ石結晶によるという説や微細なルチルによるものという説があります。このルチルが、正しく方向を持って並ぶと、石の上に3本の光の帯が現れます。このスター・ローズクオーツは、スターサファイアと違い、ライトを宝石の真上から当てるのではなく、宝石の後ろ(下)から光を通過させることでスターを見ることができます。また、一条の光の帯が見える「クオーツ・キャッツアイ」があります。この場合は光を上から当てて見ます。
私自身、クオーツを買う時に合成か天然か鑑別に悩む時があります。はっきりと内包物を確認できればいいのですが、クリアーなものの場合その判断は大変に難しいです。アメジストの特徴的な内包物として、虎縞模様のものや色むらがあります。ただ、天然ものも値段が安いので、かなり大きめのサイズを購入することができます。その大きさから大変インパクトのあるジュエリーとなるでしょう。
片山新子(かたやま しんこ) FGA
スリランカ産非加熱サファイアの記事も掲載しています↓
個人の楽天ブログ「スリランカ宝石留学物語」
個人WEB「Ragems」
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宝石学的に言えば、ムーンストーンは長石(英語名Feldspar)に分類されます。長石の化学組成はカリウムとアルミニウム珪酸塩で地球上の造岩鉱物の中でも一般的です。この長石の中でもスリランカで豊富に産出されるのはムーンストーンです。特に青い光が表面に浮かぶシラーは、まるで、本当に月から来た宝石なのではないかと不思議に感じます。
この青いシラーは学術的にはアドゥラレセンス(Adularescence)と呼ばれ、その光の仕組みはレイリー散乱(空がどうして私たちには青く見えるのか?)と同じです。簡単に言えば、ムーンストーンはふたつのタイプの長石がサンドイッチのように互いに層をなしており、そこに入った光の干渉により青く見えまるのです。
http://plaza.rakuten.co.jp/gemgasuki/diary/200611230000/
(レイリー散乱とムーンストーンについて書いた個人ブログ)
ブルー・ムーンストーンは通常の乳白色のものと比べて値段がかなり高いです。スリランカでは産出量が減ってきていると言われています。乳白色のものの中にはキャッツアイのように白い光が目のように浮かぶものもありますがブルー・ムーンストーンに比べればかなり安いです。
残念ながら硬度が6と真珠と同じ低さですので、ジュエリーとしてはペンダントトップなどにするのが無難でしょう。普通はカボションにカットされますが、細長く大きさもあるカットが多いので、存在感のあるジュエリーになると思われます。
レインボー・ムーンストーンと呼ばれる赤や黄色、青などが浮かび上がるものがありますが、正式には透明のラブラドライトのことで、残念ながらスリランカでは産出されません。
片山新子(かたやま しんこ) FGA
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4月10日、香港でサザビーズ主催のジュエリーオークション、[Magnificent Jewels and Jadeite]が開催された。落札総額は38億7千万円だった。
高額落札されたジュエリーには次のようなものがあった。
26.90キャラットのカラーチェンジ サファイアを用いたK18WG(18金のホワイトゴールド)の指輪。取り巻きに合計1.20カラットの無色系ダイアモンドを使用。GIAのレポート(いわゆる鑑定書)付き。落札金額は1,200万円だった。
8.71キャラット、インターナリーフローレスのファンシー ライト ピンク ダイアモンドを用いたK18WG及びK18ピンク ゴールドを用いた指輪。取り巻きには合計1.55キャラットの無色系ダイアモンド。GIAのレポート付き。落札金額は約8,600万円だった。
2.01キャラット、VS2のファンシー ディープ ブルー ダイアモンドを用いたプラチナ製のリング。脇石はパヴェで留めた無色系ダイアモンド。GIA及びグベリンのレポート付き。落札金額は約1億1,700万円だった。
32.04キャラット、ミャンマー産(ビルマ産)無処理(熱処理の痕跡なし)のサファイアを用いた指輪。取り巻きに無色系ダイヤモンドを合計6.40キャラット用い、プラチナ製。約6,700万円で落札された。AGLのレポート付き。
内径55mm、幅14mm、厚さ7,5mmある、緑色の翡翠のバングルが約1億5千万円で落札された。
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