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2013/2/5 火曜日

ダイヤモンドと鑑定書の同一性 - 贋鑑定書の可能性は?

Filed under: ジュエリーコラム, 海外ジュエリー事情 — ジェムランドeditor @ 6:40:28

先週「安いものには安いなりの理由がある」という題名で、真珠とその鑑定書の同一性に関して書いたところ、ダイアモンドとグレーディング・レポート(いわゆる鑑定書)の関係についてのご質問を多く頂いた。

ご質問が集中していたのは、だいたい次のような疑問。

  鑑定書付きのダイアモンドの指輪を買った。鑑定書には質が良いダイアモンドと
  書いてあるが、その鑑定書は私のダイアモンドとは違う別の質の良いダイア
  モンドに関するもので、私のダイアモンドは実際には質が悪いものだという事が
  あるのか。

答えを端的に言えば、「そのような事は、無い」。

物理的にはあり得そうに聞こえるかもしれませんが、一般の流通経路に乗っているダイアモンド・ジュエリーについてはあり得ないと断言して良いでしょう。その理由について考えてみます。

真珠と添付された鑑定書の問題は、特定の真珠あるいは真珠製品を反復可能な形で特定する事が困難な為に発生しています。別の言い方をすると、類似した真珠のネックレスが100本あるとして、その内の1本を取り出して鑑定書を取得。その後、また100本全部を一緒にした後で、別の人に鑑定書を渡し、鑑定書を取得したひとつのネックレスを取り出そうとしても、正しく選び出す事が困難だということです。もちろん100本がどの程度“類似”しているかによって正解率は異なりますが、同じサイズ、色、グレードのネックレスならば、プロが見ても区別できません。仮に100本の中に1本だけ少しグレードの劣るネックレスが混ざっていたとしても、100本を見比べながら選び出す事ができればともかく、1本1本を個別に見て判断する事が求められる場合、判断は難しくなります。

一方ダイアモンドの場合はどうでしょう。鑑定書(グレーディングレポート)にプロットが掲載されていれば、普通に流通しているダイアモンドの全ては、確実に特定することができます。

プロットとは、ダイアモンドから観察される小さな欠けや割れといった特徴をダイアグラムと呼ぶダイアモンドを示すイラスト上に書き込んだもの。この特徴は人間でいえば指紋のようなもので、訓練を受けたプロフェッショナルならばプロットとダイアモンドを見比べれば両者が同じものかを判断する事が可能です。

プロット付きのグレーディングレポートは、例えばこちらのAGTのページに例示されています。

VVS1といった高品質なダイアモンドの場合、鑑定書に図示されたプロットだけでは情報が少なく判断できない場合もあり得ますが、そのようなダイアモンドでもグレーディング機関には鑑定書には記さなかった細かな特徴を記した別のプロットが保管してありますから、やはり同一性を確認する事に困難はありません。細かな特徴とは研磨の跡や結晶構造のゆがみから生じたグレイニングと呼ばれるものを意味しています。

ただし、全ての鑑定書にプロットが掲載されている訳ではありません。恐らくプロット自体を作成していない鑑定機関もあるのではないでしょうか。プロットには時間が掛かりますから、もしプロットをしなければ大幅な鑑定時間の短縮になり、人件費も抑える事ができ、結果として鑑定料を易くする事ができます。ここでも「安いものには安いなりの理由がある」という事になります。

写真だけしか載っていない鑑定書もあります。写真からは同一性を判断する事ができませんので、写真の掲載には意味がありません。それでも日本の鑑定書に写真が掲載されているのは、多くの消費者が「鑑定書には写真があるものだろう」と思っているからその期待に添っている以上の意味はありません。

ここまでに記したようにダイアモンドの場合は真珠と違って鑑定書とダイアモンドの同一性を確実に判断する手段があります。

また例えば“華珠”の基準は国内に少数あるグレーディング機関によって異なり、同じ真珠ならば世界中のどこの機関でも“華珠”と判断されるという種類のものではありません。

ダイアモンドの場合は世界共通の基準に従って品質を判断しますから、プロットが仮になかったとしても鑑定書に記された品質が正しいか否かは確固たる基準に従って判断する事ができますから、悪意を持って異なる鑑定書を添付したとしても直ぐに発覚します。

このような理由によって、ダイアモンドの場合は、異なる石の鑑定書が添付されて市場を流通する事は無いという事ができます。

ただし、ネットオークションなどで個人売買されるものはまた事情が異なりますので、取引の際は信頼関係が築ける相手と行う事をお薦めします。

by 福本

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