ジュエリー・ビジネス・トレーニング[初級講座]第4回:マーケティング概論(4)
商品[product]戦略(2)
前回に引き続き商品戦略の話をします
(3)ニーズとシーズとウォンツ
私たちが良く耳にする言葉は“個客のニーズをつかまえろ”とか“個客ニーズを知れ”などですが、ニーズという言葉の裏にはシーズとウォンツが隠されている事を知るべきでしょう。商品開発ではニーズとシーズとウォンツという3つの要素が上手く連動していかなければなりません。図にもあるようにニーズとは必要性の事であり、個客に欲しいと思わせる仕掛けづくりの事です。そしてシーズとは種まきの事で、ジュエリー様々な情報を個客に発信する事です。またウォンツとは個客の潜在的な欲求を提案するジュエリーに反映させる事なのです。
個客の欲しいものをつくれというのは、あくまでも潜在的な欲求を知り、その上でどのようなジュエリーをつくるかポイントになってくる訳です。具体的なジュエリーを知ろうとしても、いつまでたっても個客は教えてくれません。抽象的ですが、匂いを嗅ぎ分けたり色を見つけたりしながら、どのようなジュエリーを作り出すかということができなければならないのです。ジュエリーをつくる主体はあくまでも制作者側にあるのです。
売上至上主義の現在、理屈は理解していてもなかなか思うように運ばないのは、「売れる商品」「売りやすい商品」に目が向きすぎているからです。商談の場というものは、商品を売るのではなく個客が何を欲しているのかを探る場でもあります。恐らく個客はあなたの話す事に耳を貸してくれるでしょう。うなずきながら、微笑みながら聞いていると思います。でもそれでは不十分なのです。クロージングの前にやらなければならない事、それは個客の話を十分に引き出す事です。年配の個客になればなるほど、自分の事を話したがっています。たとえそれが愚痴になってしまっても聞いて上げましょう。嫁の話や孫の話などから、もしかしたら販売のチャンスが広がるかも知れません。また広げなければなりません。個客の話を聞くという事は、実は宝の山と話をしているのだと考えて下さい。
ニーズとシーズとウォンツの関係は、お互いが連携し相乗効果を生んでいきます。個客に一番適切な商品を提案できる事、これこそがマーケティングの第一歩なのです。
(4)PBとOEM
メーカー(作り手)と卸・小売店を繋ぐ商品開発にPB(プライベートブランド)とOEM(オーイーエム[相手先ブランド])があります。プライベートブランドは多店舗展開をしている小売店や問屋がメーカーと手を組み、独自のブランド商品を作り展開するもので、宝飾品業界にとっては、これから本格的に取り組むべきものの一つといえます。完成品を仕入れるのではなくオリジナルを開発する事によって、その店の独自性を打出す事に繋がるからです。メーカーが作り出す量販商品は、宣伝もするし認知度もありますが、オリジナリティにかけるという欠点があります。独自のSHOPブランドを打出すためには、何処にでもある、例えばスリーストーンのような商品では力不足になる訳です。少ない量でも商品開発が可能になる方法がポイントになってきますが、これは作り手と売り手の知恵の出し合いです。
OEMは作り手のノウハウを利用して売り手のブランドで商品展開するものですが、この方法の欠点は、ややもすると作り手側のノウハウを利用されてしまい、作り手側にとって満足感が少ないということでしょう。反対に納品すれば売上が立てられるので、開発費が無駄にならないというメリットもありますが、現実には企画が失敗した時に、そのしわ寄せが作り手側に来る事もあるので、慎重な対応が求められます。大事な事は作り手も売り手も共に満足できる商品開発であることです。
増渕邦治(ますぶち くにはる)