スリランカからの宝石便り〜その5〜スピネルと似た宝石〜
スピネルをサファイアやルビーと見間違えることがあるかもしれません。
とても綺麗なブルーサファイアだと思ったら、実は合成スピネルだったという話は、観光客を相手にした路上の土産物店ではあり得る話です。
過去にスピネルと思われていたものにターフェアイトという宝石があります。
スピネルの科学組成はMgAl2O4 硬度は8 比重3.60
ターフェアイト BeMg3Al8016 硬度は8 比重3.61
鑑別に欠かせない屈折率も非常に近いため、同じ宝石と間違えられていたのも無理はありません。では、このふたつの宝石を区別するにはどうしたらいいでしょう?
まず重要な違いは、スピネルは「単屈折」であり、ターフェアイトは「複屈折」であるということです。例えば、ぺリドットやジルコンなど複屈折の大きい宝石は、肉眼やルーペで宝石を覗いた時に、ファセットが2重に見えます(だぶって見える感じ)。しかしターフェアイトの場合、同じ複屈折でも、そのふたつの屈折の差が小さい為、ルーペで確認するのは難しく、屈折計や偏光フィルターで丁寧に調べなければなりません。また、顕微鏡で特徴ある内包物を確認していくことも大切です。スピネルに比べ、ターフェアイトは希少性が高く、値段もかなり高めです。どちらもスリランカで産出されます。スピネルはどの宝石店にも置いてありますが、ターフェアイトを扱っているお店はほとんどないです。
さて、そんな希少なターフェアイトよりもさらに希少性が高いマスグラバイトが現われました。(宝石質のものは1993年頃に登場)
化学組成は、(Mg,Fe,Zn)2 Al6BeO12 (全国宝石学協会の資料参考)
主成分はターフェアイトと同じ、ベリリウム、マグネシウム、アルミニウムとなります。
これまでの産出はスリランカが主でしたが、近年アフリカのタンザニアからも宝石質の良質なものが発見されるようになりました。英国宝石学協会の最新ジャーナルにも詳しい鑑別方法が取り上げられ、世界の関心の高さが伺われます。ターフェアイトよりも更に希少で、値段もそれ以上に高い為、スリランカで産出されてもすぐに外国の宝石フェアに流れてしまい、まずスリランカ国内の宝石店で見かけることはないでしょう。
スピネルをターフェアイトやマスグラバイトと言って売りつけることはないと思いますが、ターフェアイトもマスグラバイトも鑑別がとても難しい宝石なので、購入する時は鑑別機関等できちんと鑑別されることをお薦めします。もし、過去にターフェアイトを手に入れていたなら、もしかしたらそれはマスグラバイトかもしれません(笑)。ターフェアイトとマスグラバイトの区別は鑑別機関の高度な鑑別機械でなければ、判別できません。
片山新子、FGA
個人の楽天ブログ「スリランカ宝石留学物語」
個人ホームページ 宝石や内包物の写真を掲載「Ragems」