姿を消すヨーロピアンカット
GIAのグレーディングレポートにカット評価が加えられて2年が経過しようとしています。この2年でGIAのカットグレーディングシステムは世界のダイヤモンド業界に完全に定着しました。そして、かつてラウンドブリリアントカットの主流であったヨーロピアンカットは市場から姿を消しつつあります。
トルコフスキー理論により開発されたアメリカンカットはクラウンの高さとテーブルの小ささが特徴です。(クラウンの厚さ16.2%、テーブル53%)一方、ヨーロッパではクラウンが少し薄く(14.6%)、テーブルが広め(57.5%)のスカンジナビアカット(エプラーカットがモデルという説もあります)が主流で、プラクティカル(実用的)カットと称してテーブルを60〜65%まで広くした石が多く研磨されていました。このクラウンが薄めでテーブルの広いカットをヨーロピアンカットと称しました。
1980年代のアントワープではアメリカ人はダイヤがよく分かっていない、場面が小さく、石の内部が少し暗く見える石が何故いいカットなんだ、と言われたものです。同じ石目ですとクラウンが薄い分、直径は大きくなって見た目は大きいですし、テーブルが広い分、石の内部から戻ってくる白色光(ブリリアンシー)は多くなって明るく見えるからです。ロシアやアフリカ、イスラエルのカットもどちらかと言えばヨーロッパに近いカットでした。
GIAは今ではアメリカンカットが最高のカット(アイデアル)であるという主張はしていません。カットグレーディングシステムも特定のカットモデルを決めてよしあしを決めるのではなくFACET WARE®というソフトを使って、色々なファクターを組み合わせてカットを決めるという方式です。従ってアメリカンカットは好ましいモデルのひとつでしかないわけなのですが、研磨する側としてはモデルを決めてその形状に近づけてゆく方が工程的には楽なのでしょう、あっという間にクラウンの高い、テーブルの小さいカットがマーケットを席捲するところとなりました。ベルギー、イスラエル、ロシアはいうに及ばず、アフリカ、インド、中国の同様です。ヨーロピアンカットは古物市場から戻ってくる古い商品でしか見られない状況になっています。
個人的にはアメリカンカットはクラウンが少し高すぎる感じがしています。我が国のAGLがモデルとした15%ちょっと、の高さ(これはアメリカンカットとヨーロピアンカットの中間の高さに当たります)が好ましいクラウンの高さではないか、と思っているのですが……。
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