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2010/1/26 火曜日

ジュエリーの歴史6000年 [第1回]

Understanding Jewellery
ジュエリーの歴史6000年 [第1回]

ジュエリーの起源

ジュエリーの起源を考える前に、人類の進化についてみてみましょう。ヒトとサルの決定的な違いは「2本の足で歩ける=直立歩行」でしょう。440万年前にアウストラルピテクス(猿人)がサルから枝分かれしてヒトとしての道を歩み始めます。アウストラルピテクスの仲間にアファール猿人がありますが、1974年にエチオピア北部で発見された、アファール猿人のほぼ完全な標本は「ルーシー」という愛称がついています。キャンプ地で研究者が聴いたビートルズの名曲「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウイズ・ダイヤモンド」に由来するそうです。

accessory02.jpgその後50万年前くらいになるとホモ・エレクトゥスという原人が現れます。ピテカントロプスという名で有名なジャワ原人や北京原人などがそうです。彼らの中でも北京原人は火を使う事を覚えます。そして20万年前くらいになると、旧人のネアンデルタール人、ザンビアのローデシア人、ジャワのソロ人が出現します。彼らは死者の埋葬を始めたり、呪術を行うようになります。ネアンデルタール人と次の世代の新人であるクロマニヨン人は、同じ時代に生きていたようですが、やがてネアンデルタール人は何らかの理由で滅びてしまいます。

どうも私たちの祖先はクロマニヨン人であるらしいのですが、人類の起源については他地域連続進化説とアフリカ単一起源説があります。どちらも起源はアフリカなのですが、前者はアフリカで誕生しユーラシア大陸に分散して原人に進化、さらに同時発生的に新人になったというもの。後者はアフリカで旧人に進化してユーラシア大陸に分散していった。これは今から20年前に遺伝子のルーツを母系で遡る研究で明らかになったのです。二人の人間のミトコンドリアDNAの差を調べると、いま生きている人類はすべて15-20万年前にアフリカにいた一人の女性、ミトコンドリア・イブの子孫になるというのです。

2003年にエチオピアのヘルト村近くで発見された化石から16万年前のものと確認され、オモ・キビシュから出土したホモ・サピエンスの化石の年代測定で解剖学的に見た現世人類の起源は19万5000年前まで遡れる事が解ってきました。そして現世人が理解、認識、意思伝達の能力を持つようになったかについては、「創造の爆発」といわれる4、5万年前とされています。フランスのショベ洞窟の絵画は炭素14法という年代測定法で3万2000年前のものと確認されており、ラスコーの南西約30kmにあるキュサック洞窟の線刻絵画は3万5000年前まで遡れると云います。

accessory01.jpgところが2005年に、南アフリカのケープタウンから約240kmのところにあるブロンボス洞窟で7万5000年前の地層から発見された複数の巻貝は、貝の口とは反対側に小さな孔が開けられており、ビーズ飾りのネックレスではないかと云われています(写真右。人類最古のアクセサリーと云われる貝製のビーズ。装身行為の起源を3万年もさかのぼらせた重要な発見)。また同じ洞窟で、骨器で模様が掘られたオーカー(ベンガラとも呼ばれ、酸化鉄が主成分の赤鉄鉱)が発見されています(写真左。“人類最古の模様”が刻まれたオーカー。シンボルを使った創造的活動がはじまった最古の証拠。)。これは肌を赤く化粧する時などに使ったと考えられ、いわゆるお洒落をする装身行為とみる事ができるのです。このような行為は偶然にできたのではなく、精神的な意志が伴うもので、やがてメソポタミアやエジプトなどの高度な文明の発達に繋がってくるのです。

stone.jpgこの装身行為をジュエリーの起源といってよいかも知れません。そして6、7千年前頃からメソポタミアやエジプトをはじめとする古代文明が生まれますが、この時代になるとジュエリーはかなりはっきりした形となってくるのです。

ジュエリーの起源については護符説や、ホモルーデンス説、自己異化説、自己同化説などいくつかありますが、護符説というのはお守り、外敵から自分を守ってくれるモノといえます。人間とは元来弱いものです。人間よりも強いモノを身につける事によってパワーが体の中に蓄積されエネルギーとして発揮されるといわれています。ホモルーデンス説は、人間は本来遊んだり楽しんだりする生き物ですが、そのためには鳥の羽など美しいもので飾り立てようとします。あるいはセックスアピールで自分に注意を向けようとします。人間が本来持ち合わせている根源的な行為といったら良いかも知れません。自己異化説は、人間はとかく他人と違っていたいという傾向があります。装身具を身につける或は入れ墨等をして自分との差別化を図るなど、他人と同じになる事を避ける、個性的という事もこの範疇に入るでしょう。自己同化説は、これとは反対に一種の帰属意識といえます。集団で生活する場合、同じものを身につける事により、団結心が強まり大きなパワーが生まれます。

1stfigure.gif私はこれらが複合的に作用してジュエリーが生まれてきたと考えています。私たちの祖先は精神的な意志を持つ事ができたのです。その意志によって生活や自分自身を飾るものなどの道具や行為が発達してきました。現在も私たちはこのような原始的ともいえる行為を大事にして生活しています。それは古い、稚拙と云うものではなく、人間が本来持っている根源的なものであるはずです。ジュエリーをつける行為は、しごく自然な行為であるといえるでしょう。

増渕邦治(ますぶち くにはる)

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