ジュエリー・ビジネス・トレーニング[初級講座]第2回:マーケティング概論(2)
これからジュエリービジネスをとお考えの方
本格参入したけれど、どうも上手くいかない
ビジネスの壁に突き当たっている方のための
ジュエリー・ビジネス・トレーニング
[初級講座]第2回:マーケティング概論(2)
何故マーケティングを学ぶのか
マーケティングについておおよそのフレームは掴んで頂けたかと思います。では何故マーケティングを学ぶのかという事についてお話しします。
恐らく宝飾品業界の第3世代(55歳以上の経者)以上の人たちは、マーケティングは商売の邪魔にこそなれ、売上や利益に繋がらないと思っている人が多いのではないかと思います。それは今まで自分たちの経験と勘で充分にやってきた実績があるからなのです。
1980年以降宝飾品業界は右肩上がりに成長し1990年には2兆8千億円といういまだかつてない大きな市場を作り出しました。私もそうですが、このとき誰もが5兆円市場になると信じて疑わなかったのです。80年代から90年にかけて、自分たちの作るジュエリーは面白いように売れました。
しかし1992年に起きたバブル崩壊は、一瞬のうちに宝飾品業界を奈落の底へたたき落としたのです。それから16年、2008年9月に起こったアメリカの金融恐慌(リーマンショック)は宝飾品業界に更に追い討ちをかけました。それまで何と凌いでやっと光明がみえ出したと思ったら、更に厳しい現実が待っていました。
この年、小売店大手の「ベリテ」がM&Aによりインドのダイヤモンド企業デジコグループの傘下に入りました。そして「田崎真珠」がファンド会社にゆだねられ、さらには一世を風靡した「ジュエリーマキ」が会社更生法の適用を受けたのです。
こうした状況の中で、宝飾品業界がいつ頃好転するのかは誰もはっきりとはいえませんが、恐らく3-5年は不況が続くだろうと見ています。また少なくともこの業界が好転したとき、相変わらず海外の一流ブランドとインド、中国を核とする低価格帯の挟まれた日本の宝飾品業界の体質は、このままでは何も変わらないだろうと思います。そして複合化してきた社会と多様化した消費者・個客のニーズやウォンツに応えるためには、より具体的で実践的なマーケティングが必要になるというわけです。
マーケティングのトライアングルを知ろう
皆さんがG.Gの資格を取りデザインを学びジュエリーに仕上げます。そしてそのジュエリーを消費者・個客のもとに届けるためには流通や価格、宣伝広告などを知り、活用しなければ的確に届きません。図のようにPRODUCT(商品)とPLACE(販売)とPROMOTION(宣伝広告)の3つのPが歯車のように円滑に噛み合なければ効果が発揮できません。これがマーケティングなのです。
図にもあるように商品と販売をつなぐ役目が「Conceptual field(コンセプチュアルフィールド)」です。これはいってみれば潤滑油の役目を果たします。ただ単にモノを作れば良いというわけではなく、的確に消費者・個客に商品を伝達するためには、商品の特徴や目的などの「コンセプト」が必要になってきます。
販売と宣伝広告を結びつける潤滑油は「Design/Idea field(デザイン・アイデアフィールド)」です。これは消費者・個客に商品の良いイメージを伝えなければなりません。広告やカタログ、パッケージなどに、競合他社の商品と差別化を図るデザインやアイデアの工夫が求められます。
商品と宣伝広告を結びつける潤滑油は「Communication field(コミュニケーションフィールド)」です。ここでは消費者・個客に対して正しい商品知識と情報を伝達するためのし掛け作りのようなものです。
増渕邦治(ますぶち くにはる)