ジュエリーブログ,ニュース / ジェムランド

2007/12/7 金曜日

姿を消すヨーロピアンカット

Filed under: メレバンク・カフェ — 佐野 良彦 @ 5:00:22

GIAのグレーディングレポートにカット評価が加えられて2年が経過しようとしています。この2年でGIAのカットグレーディングシステムは世界のダイヤモンド業界に完全に定着しました。そして、かつてラウンドブリリアントカットの主流であったヨーロピアンカットは市場から姿を消しつつあります。

ダイヤモンドのカット トルコフスキー理論により開発されたアメリカンカットはクラウンの高さとテーブルの小ささが特徴です。(クラウンの厚さ16.2%、テーブル53%)一方、ヨーロッパではクラウンが少し薄く(14.6%)、テーブルが広め(57.5%)のスカンジナビアカット(エプラーカットがモデルという説もあります)が主流で、プラクティカル(実用的)カットと称してテーブルを60〜65%まで広くした石が多く研磨されていました。このクラウンが薄めでテーブルの広いカットをヨーロピアンカットと称しました。

1980年代のアントワープではアメリカ人はダイヤがよく分かっていない、場面が小さく、石の内部が少し暗く見える石が何故いいカットなんだ、と言われたものです。同じ石目ですとクラウンが薄い分、直径は大きくなって見た目は大きいですし、テーブルが広い分、石の内部から戻ってくる白色光(ブリリアンシー)は多くなって明るく見えるからです。ロシアやアフリカ、イスラエルのカットもどちらかと言えばヨーロッパに近いカットでした。

GIAは今ではアメリカンカットが最高のカット(アイデアル)であるという主張はしていません。カットグレーディングシステムも特定のカットモデルを決めてよしあしを決めるのではなくFACET WARE®というソフトを使って、色々なファクターを組み合わせてカットを決めるという方式です。従ってアメリカンカットは好ましいモデルのひとつでしかないわけなのですが、研磨する側としてはモデルを決めてその形状に近づけてゆく方が工程的には楽なのでしょう、あっという間にクラウンの高い、テーブルの小さいカットがマーケットを席捲するところとなりました。ベルギー、イスラエル、ロシアはいうに及ばず、アフリカ、インド、中国の同様です。ヨーロピアンカットは古物市場から戻ってくる古い商品でしか見られない状況になっています。

個人的にはアメリカンカットはクラウンが少し高すぎる感じがしています。我が国のAGLがモデルとした15%ちょっと、の高さ(これはアメリカンカットとヨーロピアンカットの中間の高さに当たります)が好ましいクラウンの高さではないか、と思っているのですが……。

佐野 良彦

 p_point.gif ダイアモンドはこちらで購入出来ます(サノ・トレーディング取扱い)

佐野 良彦

Filed under: 執筆・投稿者の情報, メレバンク・カフェ — 佐野 良彦 @ 4:46:46

 

mr_sano.jpg株式会社サノ・トレーディング代表取締役。    

同社は明治15年(1882年)創業の欧米時計宝石販売佐野商店が発展した老舗ダイアモンド輸入卸。

企業理念には『宝飾文化人を目指す』と掲げる。

各種業界誌への寄稿多数。確かな見識でも知られる。

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2007/12/4 火曜日

宝石便り〜その1〜スリランカで発掘される宝石は?

Filed under: スリランカからの宝石便り — shinko @ 18:07:50

大国インドの下に位置する南国の島、スリランカはセイロン紅茶として有名な国です。

また鉱物資源にも恵まれ、コランダム、ガーネット、スピネルをはじめ75種類の宝石が産出され、採掘、研磨、カット、輸出など、国の主要な産業のひとつとなっています。

1.主な宝石となる鉱物は10種類

コランダム(サファイア、ルビー)、クリソベリル(キャッツアイ、アレキサンドライト)、スピネル、ベリル(アクアマリン)、ガーネット、トルマリン、ジルコン、トパーズ、フェルドスパー(ブルー・ムーンストーン、アマゾナイト)、クオーツ(水晶、アメジスト、スモーキー・クオーツ、ローズクオーツ)

 

2.希少性のある主な鉱物は8種類

アンダリュサイト、アパタイト、ダイオプサイド、エカナイト、アイオライト、コーネルピン、シンハライト、ターフェイト

 

次回はひとつひとつの宝石についてお話していきます。

片山 新子

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